2017年度ノーベル化学賞に輝くクライオ電子顕微鏡がバッテリー科学に貢献

 

2017年のノーベル化学賞は「溶液中の生体分子の構造を高い解像度で観察できるクライオ電子顕微鏡の発明」の功績で、スイスのジャック・デュボシェ氏、英国のリチャード・ヘンダーソン氏、米国のヨアヒム・フランク氏の3名が受賞した。実はクライオ電子顕微鏡は蛋白質構造解析のダークホースで、2000年以降急激に構造解析での実績が増えたことを反映している。

 

そのクライオ顕微鏡を用いてスタンフォード大学SLACの研究グループはバッテリーの大敵であるデンドライトの原子イメージを観察することに成功した。デンドライトはLiイオンバッテリーなど高エネルギー密度のバッテリーで充放電サイクルを繰り返すと電極に成長する厄介な物質である。

この研究はバッテリーの初めてとなるクライオ電子顕微鏡のオペランド解析になる。研究グループが観察した画像データでLi金属のデンドライトが6面を有する柱状の結晶であることがわかった。バッテリーの寿命や事故につながるデンドライトの形成の原子像オペランド観察が可能になったことで、より安全で高効率のバッテリー開発に弾みがつくものと期待されている(Li et al., Science 358, 506, 2017)。

 

SLACといえば世界最長の直線型加速器を有する加速器科学研究所だが、電子線発生源の研究は自由電子レーザーや放射光の研究でも重要な要素技術であり、クライオ電子顕微鏡の開発も行っていた。下に示すイメージの左には原子像が示されおり、格子定数を右側のイメージ拡大によって得ることもできる。

 

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Credit: Science

クライオ電子顕微鏡では右側のイメージのように試料が凍結されるので、ダメージがない状態で観察できるようになる。これまで透過型電子顕微鏡で観察しようとすると、下のイメージ(左)のように電子ビームが収束された部分の温度が上がり、試料のダメージが大きく実時間観察はできなかった。

 

拡大倍率で観察するために研究グループはSEI(注1)コーテイング技術を使った。蛋白質構造決定以外に、クライオ電子顕微鏡はバッテリーのオペランド観察でも強力なツールとなると期待されている。

(注1) solid electrolyte interphase (SEI

 

 

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