水素広域マッピング電波望遠鏡CHIMEでパルサー観測

カナダに建設されているCHIME(Canadian Hydrogen Intensity Mapping Experiment)は、これまでの電波望遠鏡とは一線を画している。当初の目的は水素の広域マッピングで、そのためには広帯域(400-800MHz)の電波観測によって水素密度の3次元マップを作成することである。

 

CHIMEとは

CHIMEは可動部のないアンテナ群とタイミング計測系から構成されている。水素密度マッピングの他に、CHIMEはパルサーからのラジオ波バーストの観測にも利用できる。

 

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Credit: CHIME

 

CHIMEのアンテナは南北に平行に設置された20mx100mの円筒状の反射板で、同軸の受信ワイヤは256個のアンテナ信号を集めることで、広帯域観測を可能にしている。信号は携帯電話会社が開発した低ノイズアンプで増幅されて、2つの偏光に対応する信号(4x256)が4基のアンテナから得られるため、全部で2048チャネルの信号がFエンジンと呼ぶデジタル信号分析(DSP)システムに入力される。マルチアンテナシステムは市販の携帯の電波帯域と一致したため既製のアンプを使えたことでコストが抑えられた。

 

Fエンジン(FPGA)は2048チャネルの信号をマイクロ秒ごとに、400-800MHzに対応する1024チャンネルのスペクトルに変換される。それらを解析するのが128ノードから構成されるXエンジン(GPU)である。一個のノードはFエンジンから送られてくる1024チャネルスペクトルの4チャネル分の解析を行う。

 

ミリ秒単位のスペクトルの時間相関は数秒間積算されマップを取ることによって水素密度マップ(下図)を得る。BAOはバリオン音響振動(バリオンと光子の摂動)で、重力成長したダークマターの揺らぎにBAOの痕跡が残るため宇宙の遠方距離指標となる。図中に赤で示されたのがBAOで、ダークマター、ダークエネルギーの理解に重要な手がかりとなる。

 

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Credit: CHIME

 

2007年に発見された宇宙の彼方から届く謎の高速電波バースト(FRB)の原因は不明だが、グリーンバンク電波望遠鏡によって高速電波バーストが繰り返し起きていることから中性子星によるパルサーに注目が集まっていた。

CHIMEは水素密度分布マッピングと同時にパルサーの位置を特定することもできるため、今後の研究進展が期待されている。水素密度マッピングは重要だが地味な研究テーマで、大型研究設備を建設するのに高速電波バーストの研究テーマは役に立った。宇宙の彼方から届く電波バーストが地球外生命体によると考える人もお多いからだ。

 

核融合、レーザー、加速器の分野でもこれからの予算獲得にはポピュラーサイエンスへの寄与が求められるかもしれないが、好奇心を書き立ててることは若い世代が育つのに悪くはないのではないだろうか。CHIMEでも施設に市民の目を向けさせるイベントを開催している。加速器の公開やイベントも重要なのだ。

 

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 Credit: CHIME

 

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