透過型電子顕微鏡の同位体分析

透過型電子顕微鏡はオングストロームスケールの実空間観測ができる。試料によっては原子1個の解像度が得られるが、原子の同位体分析は行われたことがなかった。一方、同位体を識別して特定同位体原子の実空間分布を測定するニーズが増えている。

 

ウイーン大学の研究グループは12C及び13Cからグラフェンを合成して、DFTを用いて格子振動状態を計算した。次に空間分解能を評価するために、急峻でない界面から同位体原子を放出させて分布を調べ、20%の誤差で同位体空間分布を得た。(Susi et al., Nature Comm. Online Oct. 10, 2016)

実験には走査型の透過電子顕微鏡(Nion UltraSTEM100)が使われたが、開発された手法は原子解像度を有する他の電子顕微鏡の2D試料を対象とすることができる。

下の写真(c-g)はグラフェン表面を2.2秒おきに連続して測定されたSTEMイメージで(1x1nm2領域を512x512ピクセル領域にマッピングしたもの)。上コラムは生データ、中段はガウス関数のデコンボリューション処理後、下段(カラー)はガウス関数処理を2回繰り返した結果を示す。

 

ncomms13040

Credit: Nature Comm.

 

Fの白丸は放出された炭素原子の欠陥が観察され、2.2秒後のgでは表面拡散によって欠陥が消えている。分解能は十分とは言えないが6員環が途切れるので区別できる。

 

グラフェンで覆われた直径1.3μmの穴をもつ炭素膜試料に対して得られた同位体マッピングの結果を下図に示す。(a)はSEMイメージ、(b)は同位体分布マップを示す。

質量による格子振動の差を利用すれば、質量差が原子変位断面積の加速電圧依存性に反映されるため、13C同位体の放出は12Cに比べて小さくなる。この性質を用いて同位体マッピングを得ることが可能になる(下図)。

 

ncomms15780-f1

Credit: Nature Comm.

2D試料では同位体の分布マップが可能であることが示された。核反応容器表面の同位体分布に応用できるようになれば、用途が広がると期待される。

 

 

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