世界初の人工アモルファスダイアモンド

Mao教授が率いるカーネギー大学の高圧物理研究グループは世界最高圧力を発生するダイアモンドアンヴイルを用いた数々の極限物理研究で知られている。その高圧実験グループが今度はアモルファスダイアモンドの合成に成功した(Zeng et al., Nature Communications 8:322 1, 2017)。

  

ダイアモンドアンヴイルの長所短所

ダイアモンドアンヴイルは高圧発生装置の中で最も小型であるにもかかわらず発生圧力は他の方式を寄せ付けない。光学窓を使った分光手法や圧力校正、直視観察が可能であることは大きな利点であるが、困ったことにダイアモンドの単結晶パターンが災いしてX線分光や回折実験に干渉する。このため回折線が平均化される粉末結晶を焼結したシンタードダイアモンドが登場したが、今度は光学的手法が使えなくなる。

そのため光学窓として機能しつつ回折線がない材料としてアモルファスダイアモンドが望まれていた。ダイアモンドをつくる炭素の同族であるシリコン、ゲルマニウムにはダイアモンド格子の結晶が乱れたアモルファス相が存在する。アモルファスシリコンは太陽光パネルや液晶に広く応用されている。

アモルファスシリコン(ゲルマニウム)では4配位sp3共有結合の結合角の揺らぎで原子位置の長距離秩序が消失する。また結晶格子には6員環だけで構成されておらず欠陥(ダングリングボンド)も存在する。しかし大まかには近距離秩序(4配位)は残っているため、多くの物性は結晶を「ぼけ」させたものになる。

 

シリコンからカーボンへ

アモルファスシリコンはスパッタや蒸着で作成する。これまでアモルファスダイアモンドに関する報告はなかった。カーネギー大学グループはアモルファスダイアモンドの作成に極端条件を用いた。研究グループはグラシーカーボンに50GPaの圧力をかけ1,800度に加熱した。

 

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Credit: Nature Commun.

 

常温・大気圧に戻すと得られた物質の構造(電子状態)はダイアモンド結晶に近いものだったが、回折パターンは観測されなかった、すなわちアモルファスダイアモンドがクエンチされた。グラシーカーボンにはグラファイトの電子構造sp2が確認できるがアモルファス相には見られない。

近距離秩序が保たれているため透明で光学窓として使えるが、回折パターンがないのでX線回折、X線分光が干渉なく計測できる。高温高圧下の極限物理研究はアモルファスダイアモンドアンヴイルによって対象が格段に広がると期待されている。

放射光を使ったダイアモンドアンヴィルX線回折実験には下図に示すように様々な実験のセットアップが可能で、世界中の放射光施設で広く使われている。高輝度放射光源とアモルファスダイアモンドアンヴイルの組み合わせは理想的であるので、今後の極限空間の物質科学研究の進展が期待される。

 

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Credit: cpb.iphy.ac.cn

(a), (c)はエネルギー分散XRD、(b), (d)は角度分散XRD、(e)はラウエXRD。このほかにX線分光がある。

 

 

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