広視野時間分解ハイパースペクトル蛍光寿命圧縮イメージング

この論文(Nature Photonics 11, 411–414 (2017))の出版社が翻訳した日本語版のタイトル「広視野時間分解ハイパースペクトル蛍光寿命圧縮イメージング」を簡単に言えば、蛍光寿命の時間分解ハイパースペクトルイメージングなのだが、「圧縮イメージング」の意味は数学的手法でデータ圧縮をすることで短時間でイメージングが可能になる、という点を強調したいためである。

 

蛍光寿命イメージング

一般の蛍光寿命イメージングであれば市販の装置が普及している。これは簡単に言うと可視領域(400-1100nm)での蛍光寿命をピコ秒ダイオードレーザーで、TCSPC(Time Correlating Single Photon Counting)という計測技術で、蛍光寿命及び蛍光スペクトルと蛍光イメージングを計測するシステムである。

この論文ではどのような改良を加えた結果、何を測定できるようになったのだろうか。レンセラー研究所で開発された新しい装置は生体試料を対象に16の(可視光)波長で生きた細胞の広視野(数cmの範囲)分子間相互作用(反応)イメージングを目的としている。研究グループによればこの装置の特徴はMRIなど他の生体イメージング技術に比べて、高速で低コストであるとしている。

 

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Credit: Nature Photonics

 

上図の模式図のようにレーザーとNIR-CCD、時間分解計測装置に透過モードと反射モードの測定用のデジタル・ミラー・デバイス(DMD)それぞれ2組を揃えている。DMDの正式名称はデジタル・マイクロミラー・デバイスでTIの発明したマルチミラーデバイスで、現在はプロジェクターに広く応用されている。DMDの1素子は10数ミクロン角のマイクロミラーで、素子全体では数10万個のミラーが表面に並ぶ。開発された計測装置ではDMDは空間光変調器として使われ時間分解能40p秒で16スペクトル同時計測機能を有するが、イメージングは数学的手法により短時間で計測できる点が特徴である。

 

ハイパースペクトル

研究グループはカメラを単1フォトン検出器と数学的手法(アダマール変換)で置き換えるアイデアを思いついた。これが「ハイパースペクトル蛍光寿命圧縮」とされる所以である。ハイパースペクトルとはハイパースペクトルとは、数10バンド(ここでは16)以上に分光されたスペクトルのことで、ハイパースペクトル情報によって、人間の目や既存のRGBカメラでは捉えられなかったXY-波長空間の情報を捉えることが可能になる(下図)。

 

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Credit: ebajapan

 

この研究ではデジタル信号のデータ圧縮・再生処理のひとつであるアダマール変換の動的再構成可能アルゴリズムが使われている(詳細は省略)。

 

蛍光信号は16チャネルのスペクトル同時測定が可能であり、3D情報を得るために試料の周囲には3個の検出器を備えている。これによって下に示すようなイメージ画像を10分で取得することができるようになった。既存の高時間分解能計測系で蛍光寿命イメージやFRETイメージを計測しようとすれば、特定波長の計測に限られしかも高感度カメラ計測系が高価であるため、普及が困難であった。

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Credit: Nature Photonics

また蛍光寿命と並んで蛍光共鳴エネルギー移動(フェルスター共鳴エネルギー移動、FRET)を使うこともある。FRETは近接した2個の色素分子(発色団)の間を、励起エネルギーが電子共鳴により移動する現象である。この場合には一方の分子が吸収した光エネルギーが他方(受容体)に移動し蛍光蛋白質などで放出される蛍光イメージを計測することもできる。

 

 

 

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