細胞蛍光イメージングが目指す先進癌研究と治療

標識された活性部位をタグ分子で標識化し蛍光イメージングにことにより、阻害剤の酵素活性に注目して効果を調べる手法が癌細胞の転移や治療法(薬剤開発)の研究に役立っている。

 

活性部位プローブ(蛍光イメージング)で進展する癌治療

ヨーク大学とライデン大学を中心とする研究グループは活性部位プローブ(蛍光イメージング)(注1)で癌や遺伝子変異による肝臓疾患の鍵となる酵素の生理活動を追跡する先駆的な研究に取り組んでいる。研究グループはこの手法が癌治療薬の開発、肝炎など肝臓疾患の治療に役立つと考えている。また肝臓疾患の診断、治療薬の効果を評価する手法となることも期待される。

(注1)活性部位プローブ(Activity-based probe; APB)。標的酵素にタグ分子を埋め込んで生識別し挙動を観察する研究手法。活性部位プローブでは蛍光タグで標識された酵素は蛍光顕微鏡で観察するほか、キャピラリ電気泳動、質量分析などで定量分析される。

 

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Credit: chem.pku.edu.cn

 

正常な細胞と癌細胞をこの手法で比較した結果、ヘパラナーゼ(ヘパラン硫酸特異的エンドβ-D-グルクロニダーゼ)酵素が癌進行と転移に鍵となることがわかった(L. Wu et al., Nature Chemical Biology June 05 (2017)))。

 

ヘパラナーゼは細胞外マトリックスの糖類分解酵素として知られるが、その機能障害で癌細胞が転移し進行するために不可欠な成長因子を分泌する。またヘパラナーゼは肝臓疾患にも重要な役割を果たすため、治療訳の標的蛋白となっている。

 

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Credit: glycoforum.gr.jp

 

特定の酵素が癌細胞に多くみられることから癌細胞マーカーとしてや、癌治療のターゲット蛋白として使える可能性が認識されてきた。そうなるとそのれらの特定酵素の活性をイメージングする蛍光プローブ(注2)の必要性が高まり、広義には「蛍光生物学」が癌発生・転移メカニズムの研究や癌治療の重要なツールとなりつつある。

(注2)一般に蛍光は原子・分子を電子励起することで放出される。ここでは特殊な条件下(特定の生理活性分子と結合あるはい反応)で蛍光を発する分子(蛍光プローブ)を酵素に組み込むことで、蛍光顕微鏡で細胞内イメージングを行う。実際には活性検出に酵素に特殊な蛍光色素を組み込んだり、特異的に反応して蛍光を発する基質を用いるなど、様々な局所的な細胞内発光手法が開発されている。

実際にはヘモグロビンによる吸収と水の吸収を避けた650nmから900nmの近赤外領域の発光が好ましい。発光帯がこの領域にありかつ発光強度の大きい分子設計が精力的に行われている一方で、蛍光顕微鏡は励起光源に超高圧水銀灯を使ったものが一般的であるが、共焦点レーザー顕微鏡やフォトニック結晶を使った偏光顕微鏡も開発されている。

 

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Credit: motifolio.com

 

 

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