テラヘルツ時間分光が切り開くハイブリッド・ペロブスカイトの未来〜スピントロニクス・太陽光変換素子に期待

ハイブリッド・ペロブスカイト材料に着目し、太陽電池材料への応用を目指していたのは日本の太陽電池研究者であった。最近、有機・無機ハイブリッド・ペロブスカイト材料は飛躍的にスピン寿命の長い夢のスピンントロニクス材料として期待が高まっている(Nature Phys. 2017 doi:10.1038/nphys4145)。

 

有機・無機ハイブリッド・ペロブスカイト

米国のDOE管轄のエイムズ研究所(注1)は超高速光パルスで太陽光エネルギーを吸収する実験に成功し、有機・無機ハイブリッド・ペロブスカイト中の超短パルスによる正孔・電子対(励起子)の挙動を明らかにした。これにより太陽光の発電素子の鍵となる電荷ダイナミクスの研究が進展するものと期待されている。

太陽電池材料中の束縛励起子と自由電荷の挙動は特性を支配する重要な物理であったが、将来の発展が期待されているものの有機・無機ハイブリッド・ペロブスカイトでの光吸収後の電荷ダイナミクスについては推測の域を出なかった。

エイムズ研究所の研究グループはテラヘルツ分光を用いた複数の共鳴量子遷移の観測から、励起子ライドベルグ状態への遷移を含む多彩な準粒子の輸送経路(下図)を明らかにした(Nature Comm. 8: 15565 (2017))。

 

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Credit: Nature Comm.

 

励起子と束縛されない電荷、フォノンが共存し互いに絡み合う過度的な励起状態が観測されたが、光パルスの共鳴・非共鳴状態での遅延効果で励起状態とコヒーレンスを失った中間状態を識別することができた。これにより約1p秒の位相のずれ(結合エネルギーが13.5meVに相当)でテラヘルツ・フォノン散乱を免れることがわかった。

 

スピントロニクス材料への応用

一方、ユタ大学の研究グループは先にメチルアンモニウムヨウ化鉛(CH3NH3PbI3)を使ったハイブリッド・ペロブスカイト薄膜のスピン寿命が長く、スピントロニクス材料として有望であることを示して話題となっていた(Nature Phys. May 29 (2017))。エイムズ研究所グループの今回の研究で、コヒレントな光エネルギー変換の知見が得られ、より変換効率が高い光エネルギー変換素子の研究開発に弾みがつくと期待されている。

 

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Credit: Nature Phys.

 

(注1)エイムズ研究所(https://www.ameslab.gov)はDOEがアイオワ大学内に設立し運営委託する研究所で、NASAのエイムズ研究センターと異なる。745名の研究者の多くはアイオワ大学を中心とした研究者で、大学内委託研究所の代表といえる。キャンパス内に近い研究環境で境界融合研究の必要なエネルギー科学で実績を上げている。

大学と企業、あるいは国立研究所と大学の連携は最近、文部省も経産省も積極的な取り組みを行っている。この例のように研究環境が隣接するあるいは同じキャンパス内に置くことで、連携の効率が上がるし、国立研究所のマネージメントを大学に委託する米国の手法は参考に価する。

 

そうした米国の国立研究所の職員にどういうメリットがあるのか、率直にきいてみたら、「国立研究所の職員の待遇(福利厚生や年金)はどうしても、大学職員並みにいかないが、こうすることで処遇の格差がなくなる」、といっていた。この人の名刺での肩書きは大学職員となっているが、実際に働いているのは研究所である。本家のエイムズ研究センターはNASA管轄だったが相次ぐ予算縮小で、雇用削減や規模縮小で職員は悲惨な環境下に置かれたことに学んだのかもしれない。日本の国立研究所にも明らかに秋風が吹いているが、思い切った組織変更の他にも賢いしくみがありそうに思える。

 

 

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