NISTが開発した実験室X線光源による超精密物質同定システム

放射光の発展の陰に隠れがちな印象の実験室X線発生装置だが、現在でも研究所内では必要な時に使えるX線発生装置は手放せない。このたびNISTの研究グループは20年あまりにわたる地道な開発で、超精密X線物質同定装置を開発した(J. Phys. B 50 11 (2017))。

 

X線スペクトルは物質固有のもので元素の同定に利用されるばかりでなく、超精密に波長を測定すると化学的状態に関する情報まで得ることができる。NISTの研究チームは開発された装置によって、結晶の格子間隔の精密測定がこれまでよりも遥かに高い精度で行える。このため粉末X線回折装置の機械的な改良の他にモデリングを駆使した解析ソフト面でも工夫が凝らされた。研究所や企業では日常的な研究開発で、X線回折やX線スペクトル(一部は電子顕微鏡でも利用)による物質同定を頻繁に行う。

 

高輝度X線光源として実験室発生装置は放射光に勝るものではないが、必要な時に使えなくては意味がない。発生装置(管球や回転体陰極)にも改良が行われ格段に性能が向上している。精密測定の精度は必ずしも光源輝度だけでは決まらない。装置(ゴニオメーター)の精度、検出器の能力、設置環境、解析ソフトなどの総合能力がものをいう。分析ではクリーンな環境が重要である。

 

15pml002 hudson goniometer lr

Credit: NIST

 

投影型回折イメージング

NISTは世界中の研究所や企業にキャリブレーションのための標準物質を供給してきたが、今回開発された装置によって標準物質のデータの精度が上がり、これを使う計測の精度も向上することになる。新型の装置のこれまでと異なる点は全周にわたって回転できるゴニオメーターが使われていることと、高感度X線カメラが検出器に使われている点である(上図)。

回折パターンの測定にはCuKαX線とX線カメラにより複数の両方向スキャン(投影型回折イメージング法)によりゴニオメーターの特徴的な角度誤差が取り除かれる。NISTでは標準物質の格子定数の他にX線スペクトルの精密測定も予定しており、結晶格子間隔とスペクトルでの物質同定は精度の向上が期待される。

NISTの研究グループは同様の装置が世界の研究所、企業に導入されていくおとでX線の物質同定能力の信頼性が一段と高められるとしている。放射光がテーブルトップ化するまでは実験室X線発生装置の出番がなくなることはない。

 

 rd1705 NIST Xray

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