テラヘルツポンプ・プローブ分光と極性分子の複屈折

低周波の集団的分子振動は化学反応や液体の構造緩和に強く関わることはよく知られている。これまではこのような低周波モードは非共鳴条件での光学パルス手法で研究されてきたが、間接的なプローブで得られる知見では踏み込んだ議論ができなかった。このほどフリッツハーバー研究所の研究グループは、高強度テラヘルツ光による共鳴的に非プロトン系極性分子の秤動モード回転(注1)励起し、ポンプ・プローブ分光実験が過度的な極性分子運動を直接的に調べることができることを示した。

 

(注1)低周波の分子振動もしくはフォノン・モード。テラヘルツ光(0.1-10THz)は分子回転緩和や秤動モードを含む分子運動を励起することを利用して結晶化などマクロ相変化を誘導することが知られている。

 

テラヘルツ・ポンププローブ実験による過度的な複屈折は光学的な非共鳴より10倍大きい。周波数依存とモデルの考察により、研究グループは複屈折増強が共鳴秤動モード振動による。分子配向の制御、過度的Kerr効果信号の増幅、テラヘルツ非線形分光による液体中の分子間力の研究への応用が期待される(Nature Comm. 8, 14963(2017))。

 

ncomms14963-f1

Credit: Nature Comm.

 

実験には上図に示すように2次の非線形感受率を持つ非線形光学結晶に超短パルスレーザーを照射し,光整流効果(optical rectification effect)により発生させた高強度テラヘルツ光ポンプパルスを極性液体を透過させ、プロープ光で過度的な複屈折を計測する。極性液体としてジメチルスルホキシド(DMSO)が用いられた。右側に極性液体に対する平衡吸収スペクトルを示す。ここで斜線はポンプ光のLN、DASTは初段レーザーと光整流効果に用いた有機結晶(LiNbO4、4-N,N-dimethylamino-4′-N′-methyl-stilbazolium tosylate )の振幅スペクトル。

ポンプ光の波長を初段レーザーの800nmから1THz、2THzに変化させた場合のDMSO(左)とアセトニトリル(右)の複屈折信号の時間変化を下図に示す。

 

ncomms14963-f4

Credit: Nature Comm.

上の結果から秤動モード共鳴回転励起が分子の再配列を増幅することが見て取れる。簡単な励起過程のモデルの考察からこの増幅は過度的な秤動モードに起因することが明らかとなった。この研究によりテラヘルツ領域のポンプ・プローブ実験が液体中の極性分子の挙動を明らかにできることがわかった。モデルの精度を上げたり温度変化で初期のモード分布を変えることからより詳細な情報が得られる。

 

 

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