高空での放射線の影響を調査するRad-X

放射線の被曝リスクの例として高度の高い地域に住む民族や、成層圏を毎日飛行する旅客機のパイロットの被曝リスクが取り上げられる。宇宙線の影響である。実際に携帯放射線測定機器を持ち込んで搭乗すると高高度における放射線量の上昇が確認される。

 

Rad-Xとは

NASAは2015年にニューメキシコ州上空でRad-Xと呼ばれるプロジェクトの一環として8000mから36000mの高度範囲で放射線量の変化を調査するためにヘリウム気球で実際の放射線量を詳しく調べた。

その結果、線量当量(注1)が高度に比例して増大することが実測された。宇宙線は地球をとりまく磁気圏で弱められるが、大気の窒素、酸素分子と衝突しよりエネルギーの低い(それでも電離能力を有する)放射線を発生させる。

 

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Credit: antarcticglaciers.org

(注1)線量当量(Sv)=吸収線量(Gy)x 線質係数(Q)

物質によって異なる線質係数はICRP資料が日本アイソトープ協会から出版されている。

 

最近では高空の放射線量の増加が実験的に確かめられると、被曝による健康被害リスクが取り上げられることになった(下図)。Rad-Xによる実測は最も詳しい実測データとなった。高度と共に増大する放射線量の影響は宇宙空間で最大となり、2030年までに予定されている火星までの往復(3年間)の被曝では癌発生リスクが無視できないものとなる。成層圏や一部の地球上でも太陽風の影響で突発的に線量が増大することもある。

 

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Credit: spaceweather.com

 

Rad-Xは下のような構造で中心となる計測器はTEPCOである。

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Credit: NASA

 

TEPCO

Rad-Xで測定に使われた機器はTEPC(Tissue Equivalent Proportional Counter)である。プロポーショナルカウンターは代表的な放射線測定機器であるが、TEPCOは人体への影響を調べるために組織等価線量を計測するようにつくられている。実際には2μm径の生物細胞のシミュレーターが円筒状の測定器(下の写真)に取り付けられている。検出器の寸法は5cm径、厚さ5cmのガスチェンバーで電離ガスはプロパンで周囲にも細胞シミュレーター(プラスチック)で囲まれている。

プロポーショナルカウンターについては別記事を参照されたい。

 

TEPC

Credit: NASA

NASAはISSでもTEPCOの測定を行なっており、その測定結果は公表されている。

 

本コラムのリンクにある宇宙天気予報(日本語、英語)サイトでは太陽活動に伴う放射線の影響を知ることができるので、フレア情報を知るのに便利である。

 

 

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