先端的放射線治療IGRT〜イメージングでピンポイント放射線照射

イメージングは近年それ自体が光源や検出器の発達で日進月歩の発達を遂げている。もう一つの傾向はイメージングを他の手法と組み合わせることによって、従来の手法の精度が大幅に改良され新しい展開となる場合も少なくない。

 

IGRTとは

IGRTはImaging Guided Radiation Therapyの略で、オンコロジストの注目を集めつつある医療(放射線)技術の一つである。癌治療の柱の一つである放射線治療は癌細胞に放射線をピンポイントで照射することが目標である。そのためガンマナイフ(注1)や人体の動きに対応して照射位置をダイナミックに制御するサイバーナイフが開発された。

(注1)定位放射線治療技術。複数の線源(Co60)を用いてガンマ線をピンポイントに悪性腫瘍部に照射する。脳腫瘍の治療に威力を発揮する。脳以外の幹部の治療には人体の周囲を回転できるリニアックナイフがある。ただし一般の放射線治療費用の数10 倍の高額となり、設置台数もまだ多くないので汎用治療への道は遠い。

IMRTとその限界

また照射ビーム系に挿入したマスクを制御することにより、照射方向によらず癌細胞の塊の形状に合わせたビームプロファイルで放射線を集中させるIMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy)が開発されている。IMRTは正常細胞の照射料を最低に保ちながら標的(癌細胞)のドースだけを上げるためのものである。

 

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Source: Applied Radiation Oncology

 

計算機上に作られる3Dモデルに従って照射を行うIMRTは悪性腫瘍の形状が複雑である場合は効果が低い、すなわち標的のみのドースを上げられないという欠点がある。3Dモデル(下)を構築しても照射条件をその場で変えられない理由は現場で腫瘍の形状を観察できないからである。IMRTの精度限界はこの問題に帰結する。「その場観察」であるリアルタイムイメージングがこの問題に対処するために考案された。

 

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Credit: Philips

 

リアルタイムイメージンングで欠点を克服

悪性腫瘍は呼吸や人体の動きで移動するため、あるいは照射時期によっても形状変化や位置が変化するため、照射精度が低下する。IGRTはイメージングを併用することで実際に腫瘍を観察しながら形状に合わせた照射を行うのがIGRTである。現在最先端の放射線治療とされるIGRTはどのようなものなのだろうか。

IGRTでは腫瘍の形状と3D位置情報をリアルタイムCTイメージングを用いる。IMRTの特徴であるピンポイント照射をリアルタイム3Dイメージに置き換えたと考えれば良い。

ここで問題になるのは胸部X線撮影に比べて高いとされるCTの放射線被曝であるが、CTイメージングは腫瘍の近傍のみなので安心である。とはいえIMRTの副作用が無いわけではない(注2)。

(注2)副作用の症状は典型的な放射線被曝のものであり副作用とは被曝のことであるならば、照射の際に被曝量を評価して患者の受ける放射線量の監視が必要なはずである。しかし現実には放射線治療で被曝量を数値で告知されることはない。

 

残された問題

サイバーナイフでは患者の動きに対応して腫瘍が位置を変えてもその変化を追跡してビーム照射位置を計算機制御で一定に保つが、その場合にも腫瘍のリアルタイムイメージングがあってこそ、真価が発揮される。そのためにはRTRT(Real-Time Tumor Tracking)が重要である点はIGRTと同じである。MRIの利用もあるようだが主流はCTなどのX線イメージングであるため、IGRTの副作用(下記)が現れる。これらの多くは放射線障害の症状(頭痛、下痢、嘔吐、消化菅腫瘍)に一致する。

初期に現れる副作用

・皮膚の、発赤、炎症、発疹、腫れ、ふくれ、剥がれ、かゆみ、および乾燥などの肌の問題

・疲労感、疲労、および全身倦怠感

・めまい、腫れ、痺れ

・頭痛、吐き気、下痢、嘔吐

・食欲減退および消化機能低下

・治療領域の周りの脱毛

・口腔炎

・膀胱炎

・ドライアイ、口内と喉の乾燥

 

 ガンマナイフからサイバーナイフ、IMRT、IGRTと進化する放射線照射技術であるが、高額な医療負担で普及が進まない点ではBNCT同様、残された問題は汎用装置の低コスト化である。診療報酬の点数が高いこれらの医療機器をこぞって導入し、利益率を稼ぐオンコロジー至上主義も問題である。こうしてみると技術の進歩は顕著であるが基本的な問題である放射線治療における副作用すなわち被曝について、評価と告知義務という医療モラルについては進歩が見られないのは残念である。また診療報酬のために高額な医療機器を導入し暴利を貪るのは言語道断である。

オンコロジストは治療ごとに被曝量を患者に知らせる義務があるはずだ。定位放射線であってもリアルタイムにCTを使うのであれば、被曝を避けて通れない。胸部放射線治療中に肺炎を発症する患者が多いという。放射線被曝によって起こる肺炎を放射線肺炎もしくは放射線性肺炎と呼ぶ。肺が40Gy以上の放射線量を受けると放射線肺炎になる確率が高い。

 

医療用放射線量は1日で2Gy、6週間の合計60Gyが標準とされるが、RTRTのCTの線量が加算されるので、副作用としての放射線肺炎は深刻なリスクとなる。ICRPがまとめた放射線治療患者に対する事故被曝の予防(日本語訳)には過去の事故例の原因から予防指針が示されている。しかしここでも治療のための放射線量は20-80Gyの高線量が正常細胞部に意図に反して照射される事故の予防についての指針である。実際に照射による線量の評価にメーカーによる差がないように、標準化され公開されるべきである。

 

IGRTの問題点は副作用とされる放射線障害リスクだとすれば、パルス照射CTや検出系の好感度化などが問題解決の緒になるかもしれない。

 

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