自然放射線レベルの高い地域での発ガンリスク

 前回動物実験の結果, 一定の値以下であれば,被曝によって,ガンの発生リスクは高くならない,と報告した。それではヒトの場合同じような調査ができないだろうか? この問題にある角度から答えた調査研究がある。それは,世界の中でも自然放射線のレベルが高いといわれる地域での調査である。


 世界には,他地域と比べて自然放射線のレベルが高いと言われる地域が何か所かある。図1は,発表されているデータを公益法人・体質研究会がまとめて web に報告されているものである。

 

f1trim


 図から分かるように,最も高いラムサール地方(インド)では,年間の自然放射線量の平均が,10.2mSv と極めて高い。これらの地域に住んでいる住民の健康被害はどうなっているのか,今まで多くの研究チームが調査研究を行ってきた。その中では,特に中国・陽光とインド・ケララ州においてなされた調査研究が,規模も大きく,信頼に足る研究結果を与えていると評価されている。それらについて,少し詳細に見てみよう。


(1) 中国・陽紅における調査
 中国広東省陽紅市の高自然放射線地域では,1972年から中国政府による疫学調査が開始され,1992年からは京都大学名誉教授の菅原努博士を中心に日本の財団法人体質研究会と中国の研究グループとの国際共同研究という形で,大規模に進められてきた。陽江地区の住民約80,000人の被ばく線量は約6mSv/年である。一方,被ばく線量約2mSv/年の対照地域の恩平および台山市の住民約80,000人と比較すると、がん死亡率(全がん)は有意には増加しない。

 

f2trim


 一方, 染色体異常の研究では、1)2動原体,リング形成などの不安定型異常は高線量地域では年齢と共に有意に増加し、蓄積線量に比例する、2)安定型異常は年齢による増加は認められるが、放射線による増加は認められないことが明らかになった。


 (2)インド・ケララ州における調査
 同様の調査は,インド南西部ケララ州のカルナガパリ地区でも実施された。結果は,中国の場合と同じく,測定された平均被曝量の範囲では,ガンの相対的リスクは増大しなかった。グラフからの印象は,逆に小さいが負の相関を持っているかのように見えるほどである。

 

f3trim


 これらの結果が示すところは,繰り返しになるが,不安定型の染色体異常は,どうやらしきい値なしの直線(LNT)仮説にしたがうようであるが,ガンの発生リスクに関する限り,測定されている年間 15mGy までの範囲では,増大しないと言ってよいと思われる。では,その間 (15-100 mSv)はどうか。少なくとも動物実験の例と併せて考えると,どこかにしきい値が存在すると考えるのが妥当なのであろう。このしきい値は,ガンの種類によっても異なってくると思われるし,また被曝時期(年齢)によっても異なる可能性がある。さらに慎重な研究の発展が望まれる。


You have no rights to post comments

コメント  

 
# Farmer 2014年03月04日 08:00
放射線照射で品種改良するということは、何らかの遺伝子配列を壊すことで逆に優位性がでるということなので、弱い放射線によってそのようなことが起こっているなら、高地の人の長生きが説明できりかも知れませんね。

ほっとしました。太古から浴び続けてすでに耐性ができているということでしょうか。

大変興味ある記事でした。
 
Login

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.