放射線と生物 - はじめに

2011年3月11日の大震災から2年を過ぎました。この間,私も放射線の問題をずっと考え続けてきました。当初は専門家の一人として。その後は,もっと広い視野の問題として。ある時点から,この問題はサイエンスの根幹にかかわる問題として捉えてきました。

いつかの朝日新聞に載ったインタビューで,イギリスで同じ種類の問題が起こったとき,結果的には科学者への信頼が増す方向で収束していったとありました。遅まきながら,日本でも,そのような方向への努力は,我々研究者の責務だと考えています。

1895 年に Roentgen がX線を発見し,キュリー夫人がラジウムを発見して以来,放射線には医学への利用などの人類にとっての正の側面と,放射線障害の負の側面とがずっと同居してきました。負の側面については,キューリー夫人が,再生不良性貧血で死亡するなどの不幸な歴史を経て,たくさんの研究が積み重ねられてきました。しかしまだ多くの未解明な部分があります。

そうした歴史の中で,やはり広島・長崎に投下された原子力爆弾は,最も劇的な大きな事件でした。その教訓は,「人類は2度と原子力爆弾を兵器として使用しない」という世界の共通の理解として位置付けられています。我々はこの悲劇から多くのことを学びました。その中で,放射線の問題を考える上で大変重要な知見を我々は得ました。それが図1に示す放射線の人のガン発生確率との関係を示す研究結果です。私はこの調査に御協力いただいたすべての関係者の御苦労に心から感謝しています。これからの話も私はこの結果から出発したいと思います。低線量被曝の問題には,その後多くのデータが集積されてきています。しかしその解釈について,多くの意見があります。それらについて,一つ一つ考えていきたいと思っています。

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コメント   

# Mr. GMO 2013年06月18日 08:14
2GHz携帯電波の影響による癌発生確率の上昇は1.4倍(国立がんセンター)だそうです。図から推測され る過剰相対リスクのフルスケールでも及ばないようですが。ラット実験の結果が知りたいですね。
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# Mr.Toshi 2013年06月19日 18:14
GMOさんへ;

1.
1eV=242 PHzなので、2GHz=8マイクロeVです。如何なる電子励起もできませんので、活性酸素はできず、がんにはなりません。
2.
神経伝達は2GHzには到底追随できませんから、神経性の障害も起きえません。

従って、2GHzは、熱的影響しか考えられません。それによってがんの発生確率が増えるなど、あり得ません。

WHOの報告はマスコミを騒がせましたが、物理屋としては、とても受け入れ難い主張です。

がんセンターも同じ結果を得たとのことなので、両者に共通する、なんらかの実験ミスによる、のでしょう。

物理屋の批評に堪えるしっかりとしたデータを出してくれれば、検討する、と言うので良いのではないでしょうか?
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# Mr.Toshi 2013年06月19日 18:22
失礼しました。
1eV=242 THzのタイプミス、です。
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# Guest 2013年06月20日 08:38
このコメントは管理者によって削除されました。
# 誇り高き苦学生 2013年06月27日 09:31
乾燥した物質と水に浸かった生体は分けた議論が必要な気がしています。

水溶液ひとつでもpH、電解質イオンの種類、多成分の種類と濃度、温度、など様々な環境があります。

コラムに期待することは生体そのものへの直接的な放射線効果と、その環境(特に水分子)をとおしての間接的効果について、わかり易い説明。

人体への影響の有無を主張するだけの怪しいサイト、とんでもない風評、わかりにくい放射線効果の論文。。。

期待しています。
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# WHOは時々変 2013年06月27日 09:43
広島で原爆後遺症に悩む人の個体数からすればこの図のサンプル数が異常に少ないのではないですか?

直線性が成り立つ場合のみをプロットしたなんて考えたくないですが、そぼくな疑問です。
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# 夏が来ると思い出す 2013年07月09日 08:06
毎年この季節になると思います。

長崎と広島の被害の差は長崎が中心部を悪天候で外したということ。

悪天候のために博多が標的を逃れたということ。

自然という気まぐれで救われた人々と逆に犠牲になった人たち。

歴史を学ぶ理由のひとつは過去の過ちを繰り返さないためなのだが、近代史が教えられていない国の教育に問題があるのではないか。

ご冥福を祈るばかりである。
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# keiko 2013年07月18日 10:47
放射線効果で悪いことが頭に浮かぶけど、放射線効果でも場合によっては、害虫耐性が改善されて、食されてい るものありますよね。
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# 裏千家 2013年07月22日 11:25
平均線量は爆心地からの距離で算出したものでしょうか。建物の遮蔽でかなり異なるのではないですか?

他の要因や体質を考慮したら、リスクの一因と
いえる影響だったのか、そうでないのか気になりますね。

勉強になりました。
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# Tetsuji 2013年07月22日 11:29
原爆の場合は放射線障害を受けている人が熱線で火傷を同時に負い、死亡する確率が高いので、死亡にいたる放 射線障害によるとされる死亡例が抜け落ちている。
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# Morizoi 2013年07月22日 11:33
広島長崎の事実は近代史でもタブーのひとつであり、教えられないまま育ってきた世代には本当のことが理解出 来ない。それで原子力一般に理由なく恐れる。
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# もんじゅの知恵 2013年07月23日 16:58
原発問題では科学者とエンジニアの議論がうまくかみ合わない。

近年の地球環境の悪化と資源の枯渇をみれば既存の技術だけで延命は困難。

未来は決して明るいとはいえないが、ひとつだけはっきりしているのは、科学者の責任が昔に比べてはるかに重くなるだろう、ということ。
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# Takasu 2013年07月23日 17:01
低線量の放射線効果は同様の結果を与える他の因子のバックグラウンドに隠れてしまう。

低線量効果は他の要因を同一にした無菌室で培養された生命体(バクテリア)の統計処理によるべきなのではないか。
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# Keiko 2013年07月23日 17:10
放射線とがん発生の関係は公式発表がWHOからなされていますね。

放射線効果とがん発生の直接相関のように聞こえますが、実際にはがんを発生した場合を対象にしている。

なので直接相関はわからない、に等しい。次回以降に期待します。
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# Takumi 2013年07月24日 09:09
甲状腺の被ばく線量(等価線量)が100ミリシーベルトを超えたと推計される人が2000人に達した。

この方々には気の毒だが、任意で経過観察の対象者となっていただき、正確なフォローを国が責任を持って行うべきである。
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# Tadashi 2013年08月08日 08:44
やっぱり生体への影響は確率なので、圧倒的に対象数が少ないので、現時点での早急な結論は危険。

同じ遺伝子を持つ試験細胞をiPS細胞で大量につくり、放射線照射条件を系統的に変えて対象数を増やすしかないと思う。
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# Takumi 2013年08月08日 08:48
線量が低い領域ではバックグラウンド(他のリスク要因)とかぶるので、因果関係は得られないと思うのですが...

なので低線量領域では線形性からはずれて一定の値に収束し0にならないはず。
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# 裏千家 2013年08月08日 08:52
チェルノブイリのデータはありませんか?原爆の場合は熱線でやられて生き残れないので検体数が限られる。

チェルノブイリは無意識で被曝したので、検体数が多いはず。。。

政府の公表値は信頼できないですが、NPOとかのデータがありませんか。
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# Tdashi 2013年08月10日 15:15
電離放射線はかなり弱い突然変異原ということなので、特に低線量域の議論は難しいようです。なので高線量域 の話から知りたいです。
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# 和子 2013年08月10日 15:17
放射線で生じたがん細胞の成長に他の因子のと違いはあるのでしょうか。
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# Konno 2013年08月10日 15:19
被爆者データの検体数はもっと多いはずなのでは?
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# Morizo 2013年08月11日 10:24
突然変異はDNA切断の修復が完全でないために起こるのでしょうか?

そうだとしたら進化も淘汰でない突然変異が優勢で生き残る方が早い?
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# 久冶 2013年08月11日 10:27
吉田所長のがんは原発事故と関係なくても、その前の被爆が関わっている可能性はあると思います。愚直な首相のいいなりにならなかったことを感謝します。

ご冥福を祈ります。
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# 今西 2013年08月11日 10:31
チェルノブイリでは奇形児が生まれた。気の毒なことだが原爆の影響でそのようなケースはあったのだろうか。
ビキニのケースも含めて、あらためて調べたらどうなるのだろうか。
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# Tomohiko 2013年08月11日 15:59
最近、ダーウイン流の自然淘汰説があやしくなってきている。何万年もかかって進化する間に受ける自然放射線 でDNAが切断され、修復されずに突然変異をして、それが優勢な場合、生き残って淘汰にみえる、ということ なのではないか。
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# 村民 2013年08月11日 16:03
遺伝子組み換え作物に比べて放射線照射による品種改良は安全だそうな。

組み換えでは新たな配列を加えるから得体の知れない結果を引き起こすリスクがあるが、照射では主に切断つまり引き算なので、という理由。

切断でもとにもどらない場合、突然変異は無視してないのだろうか?
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# Tetsuya 2013年08月12日 09:34
やっぱり自然淘汰のきっかけにいまよりはるかに強烈だった放射線による突然変異が関係しているって思える。 だって何万年たっても繰り返しなら淘汰にならない。
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# Oliver 2013年08月12日 09:58
やっぱ世界中の教科書に広島長崎の現場の写真と説明を載せるように、UNESCOは努力すべきだ。

オバマの演説の放送にも写真をカットでいれる。

ワシントンに記念館をつくる。
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