放射線と半減期

 今回はちょっと切り口を変えたコラムを書いてみます。放射性物質は時間とともに崩壊しますが,最初の量の半分になる時間を半減期といいます。

式で考えると,最初N0個あった放射性物質が時間 t 経ったときにN個になったとすると,単位時間あたりに崩壊する個数は,そのとき存在する物質の量に比例しますから,時間 Δt の間に崩壊する数をΔNとすると, 

    ΔN = -λNΔt

ここでλは定数です。これを積分するとN=N0exp(-λt)になります。

物質が最初の半分になる時間をTとすると,
    N0/2 = N0 exp(-λT)

したがって,T = ln2/λ=0.693/λとなります。

放射性同位元素(Radio Isotope, RI と略します)は,自発的にα線やβ線,γ線を出して崩壊します。表1に主なRIの半減期を示します。このように半減期は,非常に短いものから非常に長いものまでいろいろあります。このことがいろいろなことに利用されたり,いろいろなことを説明できることになります。

1. 半減期が非常に短い場合

 半減期が数分から2時間程度のものは,PETなど体内モニター用に使われます。表1によく使われるRIと半減期を示します。特に最近ガン組織モニター用に良く使われるのは,FDG (18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)という物質ですが、これはブドウ糖がガンの患部に集積することを利用して腫瘍部位を特定するのに使われます。半減期が短いので,検査が終わったあと放射能が急速に減少していきますから,被爆の影響を抑えることができます。

2. 使用済み核燃料について


 N=N0exp(-λt)=N0exp(-0.693t/T) において、半減期Tが非常に長い場合を考えてみましょう。このとき、単位時間あたりに崩壊する放射能はΔN/Δt=-λN=-λN0exp(-λt)~-0.693N0/Tとなり,半減期Tに反比例します。例えばU2351個が崩壊して,Cs1371個ができるとしたとき,線量率は, 半減期の逆数に比例しますから,2.3 x 10の7乗倍の放射能を出すことになります。実際にRI 1gあたりの放射能は,表2にあるようにCs137 が 4.0 x 10の7乗倍強いことが分かります。これが核分裂した後,大量の放射能が放出される理由です。また使用済み燃料は,引き続き自然崩壊を続けるのですが,その折に生成する中間物質はそれぞれ半減期が長くないので,大量の熱を出し続けることになります。

3. ヨウ素とセシウムの放射線について


 福島の第一原子力発電所の事故の後,放出されたRIは,キセノン133,ヨウ素131,セシウム134,セシウム137などでした。これらは,事故の後に,気体となって放出されました。このうち,キセノン133は,そのまま気体となって空気中に拡散したために地上での検出はあまり高くありませんでした。ヨウ素とセシウムは,高温下では気体ですが,空気中に放出され冷やされると固体となり,地上に落下しました。事故直後には,ヨウ素の出す放射線の方が圧倒的に大きかったのですが,その理由は半減期の差です。ただヨウ素はその半減期があまり長くないゆえに,1ヶ月ごとに 1/10 ぐらいに減少していきましたね。

4. 生物学的半減期


 物理的な半減期は以上に述べたとおりですが,それらが体内に取り込まれたときに,体内にどれだけ長く滞在するかは,もう一つの重要な問題です。これを生物学的半減期といいます。これは体内でどの組織に蓄積されるのかで大きく異なってきます。セシウム137の場合,主に筋肉などに蓄積されると言われており,通常の蛋白質のターンオーバーの時間と同様の70日から100日と言われています。これについては,高田純教授の興味深いデータがあります。高田教授はチェルノブイリに放射線汚染の調査に出かけた際,現地の人達と一緒にきのこを食べ,その後自分の体内に残留するセシウム137を計測しました。結果は図1に示すとおりで,ほぼ100日ぐらいで半減していることが分かります。


 一方,ストロンチウム90 は体内に取り込まれると骨に蓄積すると言われており,その生物学的半減期は50年と推定されています。したがって,もしストロンチウムが取り込まれた場合にはより深刻な体内被曝が予想されます。福島の第一原発で放出されたストロンチウムはセシウムの約 1/100, 原発から 7〜30 km の地上で観測された値は,1/700 〜1/4000 と報告されています。このことを考えると,福島の原発事故の場合には、ストロンチウム汚染はあまり大きくないとみなしてよさそうです。

表1.PETに用いられる主なRIの半減期

table1trim



表2.主な放射線核種の放射能の強さと半減期

table2trim

 


fig.1trim copy copy copy


図1. 高田純教授の体内セシウム137の経日的な減衰データ(高田純「世界の放射線被曝地調査」 - 講談社 平成14年(2002年)より)



コメント   

# Katsuko 2014年04月01日 12:47
ウランの半減期がこれほど長いのであれば広島の記念館あたりは人が近づけないのではないですか?

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.