放射線と生物

ガンとは何かーその研究展開の歴史

 放射線被曝により起こる確率的事象としては,遺伝的影響とガンの発生確率の増大と言われます。ガンの発生確率が増大するのも,遺伝的変異によるもと環境因子が大きく関わっています。これらを整理するために,まずガンとは何かを考えてみたいと思います。このテーマの執筆にはずっと呻吟してきました。多くの情報が溢れる中で,本物の情報をきちんとえぐり出して伝えていくことがこのコラムの目的ですが,これはそんなに易しいことではありません。今回の議論は主に,最近学士會会報に執筆された野田哲生(癌研究会代表理事)の著作を紹介する内容になります。あらかじめお断りしたいと思います。なお,がん,癌,悪性腫瘍はほぼ同義で使えますが,正確には異なるそうです(Wikipedia)。がんを用いるのが,最も広義に使えますが,平仮名は間違えやすいので,この小文では,片仮名のガンを用いることにしました。

放射線と甲状腺癌

 このテーマでコラムを書こうと思い立ってから既に1ヶ月になります。書く内容はほとんど決まっているのに中々筆が進みませんでした。主な理由は,このテーマで書くべき内容はそんなに新しいことは言えないし,これから示すデータや論旨の根拠は,きっと皆さんが知っていることが多いにも関わらず,意見が収束しないーその理由も分かっているからです。それでも最も重要なテーマの一つですから,冗長を厭わず書いてみたいと思います。

放射線と半減期

 今回はちょっと切り口を変えたコラムを書いてみます。放射性物質は時間とともに崩壊しますが,最初の量の半分になる時間を半減期といいます。

放射線の生物への影響は,被曝した放射線の線量率に依存する

 放射線の生物への影響については, 前回までに (1) 100 mSv 以上の被爆とガンの発生率には関係があること、(2) 高線量被爆地域のデータから, 15 mSv/年までは,被曝量とガン発生率に因果関係が認められないこと、(3) 動物実験の結果は,ガン発生率が増加し始める被曝量には閾値があること,を綴ってきました。では,ヒトの場合、この閾値がどのくらいなのでしょうか? 以上の結果から考えて、どうやら 20mSv/年から 100mSv/の間ではなかろうか,と思われます。が,今回はその問に答えるのではなく, 上の (1) と(2)+(3) の間の重要な違いについて触れてみたいと思います。

自然放射線レベルの高い地域での発ガンリスク

 前回動物実験の結果, 一定の値以下であれば,被曝によって,ガンの発生リスクは高くならない,と報告した。それではヒトの場合同じような調査ができないだろうか? この問題にある角度から答えた調査研究がある。それは,世界の中でも自然放射線のレベルが高いといわれる地域での調査である。

低線量放射線のヒトや動物への影響について

 低線量の放射線が,人体にどのような影響を及ぼすかを考える上に,動物を使った実験は非常に有用な情報を与えてくれます。この点でも,近藤宗平著「ヒトはなぜ放射線に弱いか(講談社,ブルーバックス)」に先駆的なデータが載っています。基本的には今でも近藤先生の書かれている主張がそのまま使用できると思います。

生物への放射線の影響

放射線の生物への影響については,3つのことを区別して考える必要があります。

まず,第一は,物理学的な損傷です。今までの多くの事象から,ヒトは数Gyの放射線を浴びるとほぼ半数が,10 Gy を全身にあびるとほぼ全員が死にます。しかし,このエネルギーを熱エネルギーと考えると,体内の温度はわずかに2/1000 度しか上がらないことになります。

放射線と生物 - はじめに

2011年3月11日の大震災から2年を過ぎました。この間,私も放射線の問題をずっと考え続けてきました。当初は専門家の一人として。その後は,もっと広い視野の問題として。ある時点から,この問題はサイエンスの根幹にかかわる問題として捉えてきました。

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