超集積植物の研究に威力を発揮〜オーストラリア放射光XFMビームライン

世界中で重金属の環境濃度が高まっている。環境中に放出された重金属はセイヨウカラシナなどの超集積植物中に蓄積され、高濃度の汚染源が形成される。特に最近では放射性核種が環境中に放出され特定の動植物に蓄積されることが話題となったことは」記憶に新しい。植物中に取り込まれた重金属の挙動を調べるためには、X線分析が有効だが異なる手法を複合すれば情報量や精度が大幅に向上できる。

 

オーストラリア放射光 

ここで紹介するのはオーストラリア放射光(Australian Synchrotron, AS)で測定した蛍光X線マイクロ分光(XFM)を使ったクイーンズランド大学の研究チームによる超集積植物の研究である(van der Ent et al., New Phytologist, online Oct. 10, 2017)。オーストラリアの結晶学関連の放射光研究者が日本のPFにオーストラリアビームラインを作り、APS利用を経て独自の3GeV放射光施設をASを建設した。ASにはXFM専用ビームラインが設置されている(下図はフロアマップ)。

 

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Credit: Australian Synchrotron

 

下に示すXFMビームラインはKBミラーとフレネルゾーンプレートを使った一般的なマイクロビームラインでIDTという企業が設計・建設した。X線アンジュレータを光源とし2結晶分光器(Si(311)、Si(111))とKBミラーは長さ240mmの光学系の資料位置でのスポットは1ミクロン径、ビーム安定度は15nradとなる。なお1ミクロンビームは第3世代リングでは標準的だが、第4世代の標準は100nmでしかもエネルギー走査でも動かない。

 

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Credit: Australian Synchrotron

 

重金属の吸収(蛍光)エネルギーに対応した2Dマップ(下図)には超集積植物中に蓄積された重金属の局所的な分布が明確に示されている超集積植物が生体に悪影響を及ぼす重金属と共存できる理由は謎であるが、その理解には植物中の分布を知ることが不可欠で、XFMは強力な研究手段となっている。

 

ピクセルアレイ検出器Maia

XFMビームラインの特徴は高速X線検出器Maiaである。Maiaは平面型シリコンアレイ検出器でCSIROとBNLが協同で開発した。Maiaはマイクロビーム走査で威力を発揮するピクセルアレイX線検出器で、入射X線エネルギー走査(4.2〜22keV)でX線蛍光収量スペクトルを測定でき、位置を走査すればスペクトロイメージングが行える。

 

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Credit: Australian Synchrotron

 

後方散乱配置に置かれる384アレイのシリコンピクセルで構成されるMaiaはエネルギー分解能275eVでピクセルあたり0.5-50m秒の積算計測で使用される。Maiaはオーストラリア放射光、NSLSIIの他にCHESS、PETRAIIIでも使用されている。高輝度光源の進歩は光学系と計測系の発展も促し、光学系はKBミラーの初段収束光学系にゾーンプレートのマイクロビームラインは一般的となった。またNSLSIIでラウエレンズ光学系の開発も進み、Maiaとの組み合わせによってマイクロビームXFMは高度な非破壊分析が能率的に行えるようになった。

最近、Maia Rev. Cと呼ばれる改良型でS(2.2keV)とP(2keV)が測定可能になった。なおXFMビームラインではマイクロXANES、STXM、蛍光CTの測定も可能である。

超集積植物中の軽金属はX線の収率が低いためプロトンビームを励起に用いたPIXIEと併用される。この場合は凍結試料が用いられ、断面試料で細胞レベルの原子マップが得られる。XFMとPIXIEを補完的に利用することで超集積植物の研究が加速された。

 

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Credit: Australian Synchrotron

CLSやASは光源性能からいえば最先端の第4世代リングに及ばないが、どちらも安定なマイクロビーム利用のX線イメージングを実用ツールとしての応用に強みを発揮している。

 

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