相対論的電子と大強度レーザーの衝突実験で量子的放射が検証される

荷電粒子が電場の中で急に減速されたり、進路を曲げられたりした際に発生する電磁波の放射はX線発生装置から放射光源まで幅広い発生装置の現象である。電磁波の放射はローレンツ力の式に補正項を加えることで古典的に記述することができる。

 

z方向の磁場と均一な電場の中の荷電粒子(電子)は運動方程式、F=mdv/dt=q(E + v x B)で記述できるが、加速器中を相対論的速度で運動する電子について拡張するにはローレンツ因子γ=E/mc2(0.511MeV)を導入すれば良い。電子反跳のエネルギーは高エネルギーフォトンの電子散乱では無視できず、量子的記述が必要となる。

 

加速器を除けば、このような量子的な記述が必要な放射現象は暗黒物質やクエーサーでしか起きないと考えられてきたが、インペリアルカレッジの研究チームはレーザーウエークフイールド(注1)で加速された相対論的電子と大強度レーザーの衝突では、実験室系でもこのような反跳電子が無視できない放射が観測されることが明らかになった。下図に実験セットアップを模式的に示した(J. M. Cole et al., 'Experimental evidence of radiation reaction in the collision of a high-intensity laser pulse with a laser-wakefield accelerated electron beam', Physical Review X 8.011020)。

(注1)レーザーウエークフイールドについては別記事参照(加速器新技術によるコンパクトX線光源〜その1: レーザー・ウエークフイールド

 

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Credit: Phys. Rev. X

 

研究チームは相対論的領域に加速された電子を英国のCentral Laser Facility(CLF)Geminiレーザー(注2)の大強度レーザービームと衝突させ衝突後の電子のエネルギー損失を実測した。レーザーの強度が極めて高い場合には、衝突した相対論的電子のエネルギー損失(速度減衰)が観測されるという興味深い結果を得た。フォトン(X線)と物質の衝突ではコンプトン散乱はX 線の粒子性によって 説明されるが、高エネルギーフォトンでは反跳電子は無視できない。

(注2) 800nmで15J、 30フェムト秒パルスで繰り返し間隔は20秒。2ビームを合計して出力1021Wcm-2が得られる。

 

下図は平面波との衝突を仮定した時の衝突後に測定される電子エネルギー損失スペクトル。RRはRadiation Reactionの略。量子的モデルでの運動量減衰が大きいことがわかる。

得られたデータは古典的なマックスウエル方程式から外れ、量子的モデルによる数値計算に近い。大強度レーザーと相対論的電子衝突はマクスウエル方程式に基づいた電磁波放射の記述に量子論的取り扱いが必要となることが実証されたと言える。

 

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Credit: Phys. Rev. X

 

 

 

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