LHCがオデロンの検証に成功か

TOTEMコラボレーション(国際共同研究チーム)はパワーアップ後に13TeVというエネルギーフロンテイアをさらに切り開いたLHCはオデロン(Odderon)と呼ばれる新しい準粒子の検証に取り組んでいる。

 

陽子と中性子を含むハドロンはグルオンによって結合したクオークで構成される。これまでの(パワーアップ前の)LHC実験では、陽子同士の衝突は偶数個のグルオンが交換されるものに限られていた。一方、13TeVでのTOTEM衝突実験で奇数個のグルオンの存在を示す証拠が初めて観測された(TOTEM collaboration, arXiv:1712.06153)。

 

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Credit: TOTEM@CERN>

 

これまでの理論は常にグルオン対に基づいて構築された「偶数個のグルオン」を前提としているが、衝突エネルギーの範囲を広げた実験で、その仮定が覆ることになった。つまりグルオンは3個、5個、7個の場合もあり得るということになった。

 

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Credit: TOTEM@CERN

 

LHCは2015年に13TeV運転を開始したが、当初は1970年代に提案されたオデロンの検証は予想もしていなかった。陽子を完全には破壊しないで衝突後の変化を精密に調べるTOTEM実験の方針が功を奏したといえる。世界各国からの100名で構成されるTOTEM研究チームの研究はオデロン(注1)が奇数個のグルオン交換によることを示したが、これによって標準模型は補強されることとなった。

(注1)レッジェ軌道をもつポメロンやオデロンなど(レッジェ粒子)を仮定すれば、ハドロン散乱実験で散乱断面積が散乱角とともに指数関数的に落ち込む現象を説明できる。

 

なおTOTEM実験でオデロンの検証についてはすでに論文がある。2017年11月の原稿は何度かアップデートされていて、2018年1月28日にアップデートされたv6が最新となる。

 

なおTOTEM実験で開発された超高分解能時間分解検出器は医学応用や宇宙線観測、さらには海水の炭水化技術など広範囲の応用が可能であるという。加速器がエネルギーフロンテイアに立つことがもたらす底辺(基礎科学と応用)の広さは計り知れない。一方では一国の財政範囲を超える加速器建設コストで、国際協力(コラボレーション)なしに今後の展開はあり得ない。国境を越えた体制が利益還元(応用)でも成立する「しくみ」を検討する時期にきているのかもしれない。

 

 

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