LCLS-IIで超伝導加速空洞の設置が始まる

 2018年1月19日にSLACはlCLS-IIの一部である超伝導加速空洞(クライオモジュール)の最初のユニットを設置した。超伝導加速空洞はフェルミ国立加速器研究所で制作されSLACに運び込まれた。

 

実はフェルミ研とSLACは深い繋がりがありフェルミ研の加速器をSLACが有効利用するなど、研究者の協力や機器の移設など幅広い分野で交流があった。超伝導加速器はLCLS-II(LCLSのアップグレードでなくトンネルを共有する完全に別のXFEL)の中心となるコンポーネントでその開発には全米の加速器研究者が協力した。

超伝導状態のNb空洞により(エネルギー損失を抑えて)効率的に加速される電子のおかげでLCLS-IIのX線強度はLCLSより4桁増大する。このためXFELを用いた研究のより高い空間・時間分解能で過度的状態を調べることができるようになる。LCLS-IIが目指しているのは原子・分子の直接観測による生体機能の解明と量子科学的物性である。

フェルミ研はLCLS-IIのクライオモジュール37基の半数を製作、残りはジェファーソン国立加速器施設が担当する(下はSLACに運び込まれたクライオモジュール)。なおSLACは一年中を通じて極端に乾燥しているので、キャンパス内で超高真空チェンバーをそのままで移動するシーンに頻繁に出くわす。湿気の多い日本ではあり得ない光景に思わず羨ましくなる。

 

FirstCryomodule Full

Credit: LCLS-II

 

一方、SLACではNbを2Kに冷却するためヘリウム冷凍機を制作する。LCLS-IIではエネルギー損失が少なく、より高エネルギー領域に加速することができる超伝導加速空洞(下図)が37モジュールで構成される。RF空洞の加速は従来の「波乗の原理」による位相同期である。鍵となるのは空洞と共振器の整合性となる。一つのクライオモジュールはNb空洞8個が連結されて組み立てられ外側は3重の冷却層が取り付けられる。

CERNのLHCに使われている超伝導空洞は日本(KEK)の技術が貢献しており、世界中の加速器科学の粋を集めた先端技術と言える。XFELへはEuropean XFELで用いられており、LCLS-IIは超伝導加速空洞を多く用いる初めての施設となる。超伝導空洞の品質はNドーピングで低温での熱拡散を抑制することで大幅に向上した(下図)。高効率加速空洞の採用でLCLS-IIの稼働は新世代のXFELの先鞭をつけることになる。

 

2 superconduct

Credit: LCLS-II

 

一方LCLS-IIの電子銃はバークレイ国立研究所とアルゴンヌ国立研究所が担当して制作される。パルス間隔が短縮されることはより多くの繰り返し実験が可能になることを意味する。LCLS-IIの数時間のデータ蓄積量は他のXFEL施設のこれまでの全稼働時間のデータ蓄積量を上回るとされている。残りの36基のクライオモジュールは18カ月で設置が完了し2020年代初めにはLCLS-IIが稼働すると期待されている。

繰り返し数の多い超高輝度パルスを軟X線領域で実現するLCLS-IIは新世代のXFELのパイオニアとなることは間違いない。

schematic

Credit: LCLS-II

 

上はLCLS-IIのNドープ加速空洞の構造。

超伝導空洞はILCの中核技術でもあるが長い歴史をもつKEKが(ILC計画の中で)少なくともR&DはX線光源と共有し、新世代XFELの整備が早まることを望みたい。

 

何故ならX線光源は加速器技術において素粒子実験と共通要素が多くなったほど進化したため、共通の目的意識でコンポーネントを開発するとでR&Dコストを節約すできるし、また加速器研究者の相互移動で人的な流動性が高まるからである。

 

 

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