ナノプローブX線イメージングによる半導体界面オペランド計測

放射光オペランド解析というとバッテリー電極や触媒機能の研究の成果が頭に浮かぶ。ここではナノ半導体ナノ界面のオペランドX線イメージング解析を紹介したい。個々の測定法(XRF、XANES)はよく知られた手法であるが、ナノプローブX線ビームの利用でナノ界面への新展開が可能となった。

 

半導体チップでは界面特性が性能を決めているが、微細化が進むに連れてその役割は増大したため、界面のイメージングにもナノスケールの空間分解能が要求されるようになった。フリードリッヒ・シュラー大学の研究グループはナノスケールで動作状態の半導体チップの界面の情報を得る手法を開発した。

研究グループはPN接合界面の組成や注目する元素の結合状態と界面電場をX線イメージングで実時間観察できることを実証した(Jihannes et al., Science Advances 3, eaao4044, 2017)。実験にはナノプローブX線ビームが必要となるため、ESRFのID16Bからの29.33keVのピンクビーム(注1)が用いられた。

 

40nmx50nmスポットのビームフラックスは1.4x1011photons/sでイメージングステップは20nmである。XANES測定時のエネルギー分解能は1eV、90nmx80nmスポットのビームフラックスは2.35x108photons/s。イメージング補正は文献(Cotte et al., J. Anal. At. Spectrom. 32, 477–493 (2017))と同じ手法による。

(注1)広域波長スペクトルを持つX線ビームを白色X線と呼ぶのに対してピンクX線はバンド幅が大きい準単色X線ビームをさす。この研究ではΔE/E~2x10-3のビームでおよそ100倍のフラックスをかせぐことができた。完全結晶モノクロメーターではフラックスが犠牲になるために、結晶の不完全性を導入して強度を上げることがある。

 

研究グループはシリコンワイヤー上にGa、Asを200nm成長させ熱処理後に50nm径のX線ナノビームを照射して、ステップ走査で各種イメージングデータを計測した。蛍光X線分析(XRF)で組成分析を、XANESで結合状態のイメージングを行うとともにX線照射で流れる微小電流をロックインアンプで同時測定した。

 

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Credit: Science Advances

 

上図Aは実験のセットアップ模式図、BはSEMイメージとXRF計測の走査マップの重ね合わせ、CはXRFマップ、DはXRFスペクトルを示す。

光源と光学系の進歩によって100nm以下のX線ビームは珍しくなくなった。ここで紹介した50nm径の放射光ナノビームはラウエレンズによってさらに絞り込むことが可能で、この方法での最小スポットは8nmである。下にID16Bの光学系とナノプローブ試料ステージの構造を示した。

 

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Credit: ESRF

 

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Credit: ESRF

 

使いやすい100nm以下のナノビームを作れれば日本の放射光が得意の精密ステージと組み合わせてこのような実験システムは同様のもの、さらに高性能の装置を作ることは可能だろう。しかしそれには単に機械的精度にこだわる伝統芸では難しい。レーザー干渉計やアクテイブノイズキャンセリングといったハイテク制御技術が不可欠である。3GeV放射光にこだわり時間が過ぎていく中で、本当はビームライン技術が光源とともに進化することができないことが問題なのではないだろうか。

ちなみにこの論文の30keV付近のナノビームならSPring-8標準アンジュレータの得意とする領域なのでラウエレンズで実用的なナノビームが使えるようになる。

 

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