世界最高分解能のラウエレンズ

放射光のナノビームのチャンピオンデータは SPring-8の7nmだが1kmの長尺ビームラインを簡単に建設することは現実的でないので、現実的にはナノプローブX線(Tender X-ray)ビームの新たな基準は100nm近辺にあった。しかし多層膜X線ラウエレンズ(MLL)の登場で、10nmクラスのナノビーム実現は比較的容易になってきている(5nmを切るナノビームが身近に〜多層膜ラウエレンズ)。

 

第4世代光源(XFELや放射光)では高輝度X線ビームが得られるが、一方ではメリットを生かしてナノプローブとするためには高度なX線光学系が必要となる。中でも第4世代放射光源で得られるラウンドビームはラウエレンズ光学系に適しているDESYの研究グループはXFEL用に世界最高の空間分解能を誇るX線ラウエレンズを開発した。新開発のレンズは新しい材料を用いて10nm以下の分解能を達成した(Bajt et al.; Light: Science and Applications, 2017)。

 

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Credit: US patents

 

上に原理を示す多層膜ラウエレンズMLL(D. Rudolph, B. Niemann and G. Schmahl, Proc. SPIE316 (1981) 103)は回折過程にブラッグ反射を用いるためにゾーンプレート回折効率で10nm以下の空間分解能が可能になる。APSや兵庫県立大グループが高性能化を競っているが、このほどブルックヘブン国立研究所は5nmのナノビームが得られる多層膜ラウエレンズ成膜技術を開発した。

多層膜ラウエレンズ光学系ではスポットサイズは多層膜間距離に比例するため、スポットサイズを小さくするためには多層膜製造の精度を上げる必要がある。研究グループはWCとSiCの交互に積層した1万層からなる多層膜をつくり、現時点で世界最高分解能となる8.4nmスポットを実現した。

 

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Credit: DESY 

開発されたラウエレンズは効率が80%と明るいことも特徴で高フラックスX線が利用できる。このラウエレンズはDESYの放射光施設PETRAIIIのP11ビームラインで原生動物である放散虫の一群のアカンタリアのホログラフイック3Dイメージングの研究で威力が示された(下のイメージ)。研究グループは3Dナノ構造を持つシリカの甲殻を有する他の単細胞動物のイメージング研究も予定している。シリカ甲殻の機械的強度は鋼鉄の10倍も大きいため、ナノ構造の3Dイメージングで構造強度の謎を解き明かすことが期待されている。

 

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Credit: DESY

ラウエレンズの発展で長尺ビームラインのKBミラー集光による光学系は不要となりつつある。X線光学系の進展と光源の改良が相乗的に放射光のナノプローブ能力を飛躍的に向上しつつある。このことは第4世代光源放射光イメージングの世界が開かれつつあることを明確に示すものと言える。

 

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