電荷秩序をもつニッケル酸化物の振動対称性の破れ〜テラヘルツ分光で観測

これまでLa1.75Sr0.25NiO4など代表的なストライプ物質における集団的な電子の動きの実時間観測は自由電子レーザーの独壇場であった(Lee et al., Nature Comm. 3, 839, 2012)。バークレー研究所の研究グループはストライプ物質の集団的な電子の動き(ダイナミクス)の起源となる電荷ー格子相互作用をテラヘルツ時間分解分光で観測することに成功した(Coslovic et al., Science Adv. 3: e1600735, 2017 )。

 

研究グループは50フェムト秒パルス幅の近赤外レーザーをポンプ光としてLa1.75Sr0.25NiO4を励起しテラヘルツレーザーパルスを遅延させて、時間分解分光を行なった。

その結果、電子励起直後は、振動対称性は凍結されて、ストライプ相が消失したのは数100〜数1000フェムト秒後で、時間遅れが相互作用の方向に依存することが明らかになった。

下図でAはスペクトル重み、Bは共鳴フォノンピーク強度、Cはそのエネルギーシフト、Dは誘電関数虚部を示す。右端の模式図で、LO格子歪みはクーロン力により電荷秩序消滅直後に「起きるが、ストライプ消滅により生じるTO歪みは時間差を持つ。

 

 e1600735.full

Credit: Science Advances

 

実験結果は別グループによるフォノン分散を用いた計算と一致した。この研究は集団の電子—格子相互作用と電荷秩序現象の理解につながると期待されている。注目すべき点はこれまではフェムト秒領域の時間分解分光はX線自由電子レーザーの独壇場であったが、実験室系でテラヘルツ領域の短パルスレーザー実験が可能になったことで、20nm空間分解能のテラヘルツ顕微分光も実現している。

テラヘルツ領域(~1012Hz)の時間分解、空間分解分光は振動状態の情報が含まれ物質科学の重要なツールとなる。テラヘルツレーザー(下図上段)やTHz自由電子レーザー(下図下段)によって多くの研究者に門戸が開かれると期待されている。国内ではUVSORIIIのTHz自由電子レーザー、KEKのcERLなどの加速器や理研のTHz光研究グループをはじめとして活発な研究開発が行われている。

 

Fig 1 A schematic of a THz TDS system showing the fs laser scanning delay line THz copy

Credit: researchgate

 

undulator 1scs db1000 copy copy

Credit: qcmd.mpsd.mpg.de

 

 関連記事

テラヘルツ帯のナノ顕微分光が開発される

サブサイクル電子ダイナミクスの原子スケール回折イメージング

テラヘルツポンプ・プローブ分光と極性分子の複屈折

テラヘルツ時間分光が切り開くハイブリッド・ペロブスカイトの未来〜スピントロニクス・太陽光変換素子に期待

水へのレーザー照射でテラヘルツ光発生

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.