核共鳴振動分光でみる水素発生の反応座標

核共鳴振動分光(NRVS)はメスバウアー分光と同じ放射光を光源とした核共鳴散乱を利用した分光の一つでフォノンの部分状態密度が得られるため、DFTなどの計算手法と組み合わせて最近、触媒反応や酵素活性中心の研究に応用が広まりつつある。

 

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Credit: pnnl

 

酵素菌による水素発生の機構解明は水分解の触媒設計に重要な指針となる。日本、ドイツ、米国の国際共同研究チームは単細胞緑藻クラミドモナスとデスルホビブリオの水素発生機構を核共鳴振動分光で調べ、両者に共通する2個の鉄原子間に活性中心が存在することを見出した(Pelmenschikov et al., J. Am. Chem. Soc. 139, 16894, 2017)。 

 

FeFeヒドロゲナーゼは水素発生ターンオーバー数(水素分子発生率)が最も高いヒドロゲナーゼとして知られる。研究チームはNRVSで酵素菌のFeに注目して振動構造を解析した。現在、世界でNRVSの実験が行える放射光施設はSPring-8、APS、ESRF、PETRAIIIの4施設に限られる。この実験はSPring-8で行われた。SPring-8の標準アンジュレータは1次光で鉄のメスバウアー励起に必要な14.4keVまでをカバーできるのでこの実験には有利である。 

 

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Credit: spectra.tools  

 

NRVSにより今回の実験で初めて、水素発生前にFeと水素が中間体をつくることがわかった。水分解は日本では光触媒の研究が盛んであるが、水素製造の効率が1-2%止まりで燃料電池の水素製造の採算性は10%以上が要求される。そのためより効率的な水素発生の触媒設計のために、酵素菌のメカニズムを参考にする試みが多い。NRVSはユニークなX線分光法で、強力なツールとなることが期待されている。

 

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Credit: scicasts

 

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