サブサイクル電子ダイナミクスの原子スケール回折イメージング

超高速(短パルス)電子線及びX線回折イメージングにより固体の電荷密度をサブサイクル(注1)原子スケールで調べることが可能になった。これらの回折イメージングをグラフェンに適用すれば光学あるいは電子現象の起源を原子スケールで明らかにできる。ここではグラフェンのミクロな電子流と電荷密度の関係への適用について紹介する(Yakovlev et al., Sci. Rep. 5:14581 (2017))。

  

(注1)強光子場科学やアト秒光科学では高強度レーザーの波長が中赤外やテラヘルツ領域になると、光電場の一周期が長くなるため、可視域の極短パルス(時間幅は数フェムト秒)を用いることによって、光電場の振動の中での電子状態を時々刻々追跡することができる。超短パルス分光や放射光や電子線ビームによる回折イメージングで原子スケールでサブサイクル電子ダイナミクスの詳細な知見が得られる。

この実験の鍵は最近のレーザーと加速器の進歩で可能になったポンプ・プローブ分光である。300kHzレーザー(3.5mW)のスポット(50μm径)に集中する0.6mJ/cm2のパワーはグラフェン基板(TEMメッシュ)の熱伝導で蓄積されないようになっている。

 

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Credit: Sci. Rep.

 

上図aの模式図はグラフェンにフェムト秒電子線(X線)パルスが照射される様子を示している。bは基底状態のグラフェン電子密度、cは励起による電子密度変化を示す。dは原子スケールのミクロな電子流、eはレーザー光子場と相互作用後の電子密度の変化を示している。下図にレーザー光子場と相互作用によるグラフェンのサブサイクル電子密度の変化を示した。

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Credit: Sci. Rep.

 

aはk空間で異なる場所にある電子の占める部分空間A—Dの定義。a=2.46Åはグラフェンの格子定数である。bは部分空間Aの電子密度のレーザー光子場(点線)との相互作用による変化を示す。

cはその時間変化、dは部分空間AとBの比較、eは部分空間Dの電荷で、励起により段階的に増加していく様子が示される。

 

フェムト秒電子線も放射光(X線)も実用化されているが、最近のフェムト秒フォトカソードRF電子銃の開発によって、テーブルトップ型のフェムト秒電子パルスが電子顕微鏡と組み合わされるようになった。

もともと加速器から生まれた短電子パルス発生技術でテーブルトップ電子線が実用レベルに達したが、将来はテーブルトップ放射光も実現するようになれば、電子線、X線回折イメージングの普及が進むと期待される。

一方、アト秒光科学の研究者たちは一足早く高調波発生で軟X線の領域でサブサイクル分光を始めている。いずれはレーザー科学、電子線、加速器の研究はサブサイクル分光の分野で融合し、新たな(物質と光の相互作用の)分野が切り開かれると考えられる。

分野間の接近を考慮すると加速器(放射光科学)の枠組みを広げて本質を共有する分野との融合の元で加速器建設を行うべきかもしれない。「加速器ありき」は過去の時代となりつつあるようだ。

 

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