ATLAS実験グループが高エネルギー光子・光子散乱を検証

CERNのLHCの立役者といえばATLASとCMS検出器の実験グループである。高エネルギー物理、加速器科学研究者はもとより、CERN長官ファビオラ・ジャネッテイ女史が、2012年にATLAS検出器でヒッグス粒子を発見した功績で2016年に長官に任命されたことで世界的に知られる。

  

光子・光子散乱現象(γγ→γγ)

そのATLAS実験グループが量子電磁気学で予想される高エネルギー光子・光子散乱現象(γγ→γγ)の証拠を得た(ATLAS Collaboration, Nature Phys. on line Aug. 14 (2017))。光子・光子散乱は古典電磁気学では禁制過程であるため、量子電磁気学の理論の検証に最適であったが、実験が難しいためこれまで検証がなされなかった(注1)。

(注1)国内には自由電子レーザーSACLAと高出力レーザーを使ってテーブルトップで検証を試みる研究もある。(https://arxiv.org/abs/1707.00253

2015年から開始されたLHCの第2期目の実験で5.02TeV鉛イオン衝突頻度を上げた結果、観測が可能となっていた。標準モデルでの実験のシミュレーションで観測の可能性が確認されると世界中の重イオン加速器科学研究者が注目した。

 

光子・光子散乱現象の観測には重イオン衝突実験が最適である。鉛イオンの加速によって周囲に発生する光子フラックスが高められる。ATLAS検出器の中心での鉛イオンの衝突と同時にイオンの周囲の光子が散乱確率も高まり計測できるようになる(超周辺衝突)。

2015年から集められた40億イベントから候補となる13回の光子・光子衝突(4.4σ)が見つかった。研究チームはLHCの第3期運転で実験を行い、検証を継続するとしている。

 

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Credit: ATLAS Collaboration@CERN

 

LHCはヒッグスボソン発見以後も装置のアップグレードでできる実験は全て手がけて勢いが止まらない。今回のように高エネルギー物理に比べて地味に見える基礎科学の基盤作りにも余念がない。加速器というものは当初の実験が済めば鉄くずだと言った人がいるが、間違いも甚だしい。使う人と使い方で応用は尽きないようだ。

 

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Credit: ATLAS Collaboration@CERN

 

 

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