世界最大のニュートリノ検出器

世界最大のニュートリノ検出器といえばスーパーカミオカンデが頭に浮かぶ人は多いのではないだろうか。ニュートリノ検出器の世界にも転機が訪れようとしている。少なくとも米国内ではそうなる日が近い。というのもウイスコンシン大学の物理科学研究所(PSL)で世界最大となるニュートリノ検出器が開発中だからである。

 

20億ドル(約2,200億円)が注ぎ込まれたDUNE(Deep Underground Neutrino Experiment)では800マイル(約1,280km)離れた地点に向けて地中深くサウスダコタ州の廃坑に設置した検出器にニュートリノ粒子を打ち込む。日本のT2Kと先駆的なK2K実験と同様の実験である。ここで紹介する液体アルゴン検出器に特徴があるものの、実験原理は悪くいえばスケールアップコピーに他ならない。とは言っても次世代ニュートリノ検出器(液体アルゴン検出器)の利用でK2K実験はパワーアップすることになる。

 

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Credit: DUNE/LBNF

 

ニュートリノの性質の理解はまだ道半ばであるが、その詳細を知ることは宇宙の起源を解明する上で重要な鍵となる。DUNE計画を支えるLBNF(Long-Baseline Neutrino Facility)ではフェルミ国立研究所の加速器とサウスダコタにあるサンフォード研究所が中心となるが、30カ国から1,000名の研究者が計画に参加している。

廃坑には縦横にトンネルが伸びているが、巨大な新型検出器設置のために新たに岩盤が掘削されて800,000トンの岩石が運び出される。検出器はAPA(Anode Panel Assembly)と呼ばれる銅メッシュの分割アノードで、1本の銅線(150ミクロン径)は4層の銅ベリリウム合金でコーテイングされる。液体アルゴン検出器では高いエネルギーのニュートリノの3D航跡を計測できる最新鋭の検出器で、KEKでも次世代ニュートリノ検出器として開発中のものである。

 

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Credit: Fermilab

 

実験当初に用いるのは3個のAPAからなる試作機だが、将来はメッシュを製造するロボットで150個のAPA大量生産を予定している。DUNEはCERNが極地に設置したIceCUBEやLHCなどの主要なニュートリノ研究施設に加わる。APA1号機はウイスコンシン大学PSLからCERNに運び込まれた。(下の写真)

 

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Credit: CERN

 

最終的なDUNE実験のニュートリノ検出器(Far)はTPC(Time Projection Chamber)と呼ばれる液体アルゴン検出空間(下図)でニュートリノの飛跡をAPAで検出する。

 

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Credit: hep.phy.cam

DUNE実験は世界中の研究者が参加したT2Kのスケールアップ実験で、潤沢な予算で将来の成果が約束されたものである。この分野における日本の貢献は誰もが知るところで、世界中のニュートリノ研究者の羨望と熱意がDUNEにつながり第二章が幕を開けようとしている。

DUNEのAPA開発や量産化は英国のケンブリッジ大学やCERNの研究者の協力なしには考えられないほど国際研究協力の貢献が大きい。どの国をとってももはや加速器や検出器の開発を独立してできる時代ではない。

そろそろ先駆者である日本も世界を巻き込んでポストDUNEの実験を計画する時期のようだ。何れにしても国際コラボという国境のないコミュニテイを抱えなければ何も進まない。

 

 

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