提案から50年後に試運転にこぎつけたERL〜CBETA

ERLの概要については別記事、「ERLの利用について」を参考にしていただくことにして、ここではコーネル大学がNSF予算を中心にブルックヘブン国立研究所と2005年から共同で進めてきたCBETA(Cornel-Brookhaven-ERL-Test-Accelerator)について紹介する。コーネル大学のERL原理の提案から50年後に、主な構成要素が整備され試験運転の準備が整ったことになる。

  

衝突実験用ERLプロトタイプCBETA

CBETAはERLの重要な要素技術であるエネルギー回収と永久磁石の実証試験を目指している。コーネル大学は超伝導空洞とエネルギー回収システムを製作した。また、ブルックヘブン研究所は120mm幅のチェンバー中でエネルギーの異なる電子ビーム収束する傾斜磁場の永久磁石システムを担当している。

両者が結合されたことで2019年夏までにCBETA建設が進展し、その試運転に成功すれば、ブルックヘブン研究所に2020年春までに建設が予定されている3.8km長の電子イオン衝突直線加速器eRHICに挿入されるERLプロトタイプ製作の目処がつく。

 

Loop Components

Credit: CBETA/Cornel University

 

世界中の加速器は30,000台と言われているが、その中でCBETAは衝突実験加速器だけでなく、蓄積リングでは実現できない高輝度光源としてもユニークでそのポテンシャルが大きい。残念なことにコーネル大計画もKEKの計画も中止になったが、将来光源としてのERLの出番があればCBETAの技術が利用できるだろう。ただしMBAとその改良で蓄積リングの追い上げでERLの優位性は薄れてきている。それでも超伝導空洞による質の良いビーム加速とエネルギー回収が魅力のある加速器技術であることに変わりはない。

CBETAのDC電子銃と超伝導加速空洞はコーネル大学のウイルソン研究所が10年をかけて製作した。コーネル大学グループはCBETAの試運転の結果がよければ再び光源として注目を集める可能性があるとしている。

eRHICはエネルギーが5-21GeVの電子とプロトンまたはヘリウム3からAuまでの重イオンと衝突実験を行う加速器でe-p衝突実験を高ルミノシテイ(1034 cm2s-1)で行うためのものである。

 

eRHIC-620px

Credit: eRHIC

 

eRHIC(RHIC)は円形加速器であるが質の良い電子ビームを衝突実験に用いるために挿入されているERLで加速する直線加速器として機能する。RHICは現在、RHICIIへのアップグレードが進められている。eRHICはアップグレードの最終形態となる。

コーネル大学グループはCBETA以前にCHESSリングを最大限再利用するために直線部を組み込んだ迂回するERL計画を提案し、コンポーネントの試作を行なっていた。100mA仕様のフォトカソード技術や、500keVから15MeVまで加速する超伝導Nb加速空洞の開発を行っていたが、エネルギー省のロードマップから外されて光源としての未来が閉ざされた。

 

コーネルERLの挫折と不屈の精神

それでもブルックヘブン研究所のRHICのアップグレードにERLが採用されたことをきっかけに、両研究所が得意とする加速器技術を持ち寄ることでNSF予算を中心に予算をかき集めて10年越しのCBETAプロジェクトにつなげた。ERLの実現には課題となる加速器技術の開発に、時間がかかることもDOEがERLをロードマップから外した理由である。それでもERLにこだわり技術開発を継続したコーネル大学グループのCBETAプロジェクトの結果によっては、ERLの見直される機会がないとは言えない。

開発途中でやめること(体裁を作ろうために凍結ということもある)は技術の「死」を意味する。しかし細々とでも継続すれば日の目をみる日がくる可能性は残せる。CBETAの成果に世界中の注目が集まるが、同時に優れた加速技術を現状の技術レベルで判断してはいけない、ということなのではないだろうか。

コーネルERLグループの一部はLCLS2の開発にも関わっているというが、計画をシャットダウンするなら関わってきた研究者の行き場を考えなくてはならないのかもしれない。

 

 

 

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