トカマクが一歩前進〜逃走電子対策に進展

トカマクに関する最近の進展は二つある。①一つはシミュレーションでスケーリングメリットが無いことが示されたこと。これはITERのような超大型施設の必要が薄れたのであれば、実用化には朗報である。②次にこれと関係するがコンパクトな超伝導マグネットを用いた球形トカマクの性能が向上し、実用的な100MWクラスの小型炉が現実味を帯びてきたことである。

  

トカマク炉の稼働を阻む逃走電子

これに加えて最新の研究によると、トカマク炉の技術課題のひとつであった逃走電子に解決策が提案された。逃走電子とはトカマク炉のデイスラプション(注1)時に発生するMeV台の高エネルギー電子のことで、ITERでもその発生を回避することが重要課題になっている。

(注1)プラズマ電流が突然切れる現象、超伝導で言えばクエンチ現象に例えられる。この時高エネルギー電子(逃走電子)が発生する。逃走電子がトカマク炉壁に衝突すると、熱エネルギーで材料が溶けてしまう。英語表記はRunaway electron。

 

逃走電子を減速する重イオン衝突

スエーデンのチャルマース工科大学のプラズマ研究グループは重イオンを高エネルギー電子と衝突させて逃走電子を減速する新しい手法を提案した。重イオンにはNe、Krなどを気体もしくはペレットで導入するアイデアである。

高エネルギー電子を重イオンと衝突によって減速させるこの手法では、最適条件や減速効果をシミュレーションで予測することができる。核融合炉の研究開発は50年にわたるがこれまで実用炉は建設されていない。ITERでさえも発電機能がない(発電炉にはならない)。一方で球形トカマクによる100MWクラスの小型発電炉の研究開発は企業で活発に行われている。

少なくともプラズマのクエンチによる逃走電子が減速されることで実用炉に向けた開発が前進することは間違いない。化石燃料が枯渇に向かうのと需要の増加でエネルギー危機は避けられない。ITERのような巨大な核融合炉で原子炉と同じように1000MWクラスの発電所を建設するのが良いのか、企業が先行する100MWクラスの小型発電所を送電網に分散配置するのが良いのか、将来の方針をそろそろ決めておく時代に入ったようだ。

 

放射性電子再結合

ところで(重イオン)加速器科学では重イオンと電子の衝突実験は身近な存在である。イオンが自由電子を捕獲すると光子を放出する(放射性電子再結合)。この現象は重イオン蓄積リングの電子冷却によるビーム損失の関係で、興味のある問題である。

放射性電子再結合が起こるときの光子エネルギーは電子の運動エネルギーに捕獲される束縛エネルギーとの和になるが、逃走電子の場合には前者が支配的である。電子のエネルギーによっては発生するγ線のエネルギーも高いが、壁を突き抜けても電子ビームのように溶融することはない。

 

21世紀はプラズマの世紀

加速器の世界でもプラズマ・ウエークフイールドはテーブルトップ加速器の実現において話題の技術である。核融合、レーザー科学、加速器科学におけるプラズマ研究はいずれの分野でも最先端の領域であることからすると、これらを横断する研究組織の必要性は高くなる一方である。

これらの境界領域のコミュニテイも全体として何が必要か、何をすれば良いか、そのためにはどうすべきかを考え、リードしていく姿勢が必要な気がする。21世紀はプラズマの世紀なのかもしれない。欧州のELIはレーザーと加速器コミュニテイが関わっている。ITERの次に何があるべきかも当然、そのような大きなコミュニテイの枠で議論すべきなのだろう。

 

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