コヒーレントX線回折でAPSが分域構造の3D観察に成功

回折限界リングの魅力はX線領域でコヒーレンスが提供されるというコヒーレント光源にある。もちろんエネルギーによってはすでに回折限界に到達している蓄積リングもあり、XFELでは積極的にコヒーレンスを使った実験が現実に進められている。X線領域でコヒーレンスを実現するのにはエミッタンスを下げる必要があり、高品位なビームが得られるライナック型光源(ERL)への期待のひとつでもあった。

消滅したコーネル大学ERL計画のコヒーレントフラックス(下図)は時間平均でXFEL(LCLS)と同程度で、しかも硬X線領域の光源としては蓄積リングの追随をゆるさない、はずであった。コーネル大学もKEKのERLも消えたが、最新の第4世代蓄積リングの追い上げは素晴らしく、やがてはERLに近づきそうな気配さえみせている。またこれから建設される蓄積リングの中にはアップグレードでリングをERL化しようとする計画もでてきている。

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Credit: CHESS/Cornel Univ.

 

コヒーレントX線回折で分域構造の3Dイメージング

コヒーレントX線回折イメージングの最新の報告によると、分域構造の形状の3Dイメージングに成功したという。分域構造の内部の原子配置の情報が高温など実際に置かれる環境下で、3Dイメージング観察で、物質の機械的な性質の限界を支配する転移のマッピングが可能になる。原子炉容器の壁材料やタービンブレードの材料劣化など、破壊事故につながる転移を診断できれば飛躍的に安全性が高まる。

これまでの研究はナノ粒子や量子ドットなど微小な試料の内部構造が研究対象であった。実用面では材料界面の原子配置(格子)が重要な役割を持つことが再認識され、その直接的観察手段としてコヒーレントX線回折イメージングが注目されている。

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Credit Kevin Raines

 

コヒーレントX線回折イメージングでは試料にX線を照射して、回折(散乱)から原子位置を特定する(再構築する)は結局、散乱(回折)X線の位相問題に帰結する(上の模式図)。対象がナノ粒子のように(結晶に比べて)原子数が制限される場合は、位相問題が簡素化されるので、これまでにAuナノ粒子1個の3Dイメージの観測で有名である。しかし一般的には分域構造のような連続する薄膜構造に対しては困難であった。

アルゴンヌ国立研究所の研究グループは分域構造に注目した。薄膜太陽電池を試料としてAPSの高輝度X線ビームを用いて、結晶格子の変形を実時間観測した。歪み場と転移など分域構造の3次元不均一性が空間分解能10nm、原子位置感度サブオングストロームで実時間観測が可能であることが示された(Science 356 6339 739 (2017))。

 

なおこの研究の元になったアイデアは2015年にカリフォルニア大学グループがAPSでLiイオンバッテリーのオペランド実験で報告されている(Science 348 6241 1344 (2017))。

 

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Credit: Science

 

今回の実験では転移の成長など動的な分域構造の3次元イメージが10nm分解能で観察できることが示された。新たなツールを得たオペランド実験はますますさかんになっていくと期待される。

日本のJST百生量子ビーム位相イメージングプロジェクトは実験室光源を前提にしている。医療用を目的としているからであるが、テーブルトップX線光源が実用化されれば、もちろんコヒーレントX線イメージング汎用装置が市場に登場することになる。それまでには高輝度放射光で手法が確立し、オペランド実験には欠かせない存在になっているだろう。

 

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