LHCが5個の新粒子を発見

ヒッグスボソンを発見した周長27kmの世界最大の円形加速器LHCは、その後エネルギーを14TeVにパワーアップして実験に取り組んだ。2015年年末にLHC陽子衝突実験で750GeVに相当する質量のピークがみつかった。新粒子は750GeVのエネルギーを持つ2つの光子に崩壊すると考えられる。750GeVピークが他の実験でも検証されれば、1500GeVに相当する質量を持つ新粒子の発見となるが、(筆者の知る限り)その後の進展はなかった。

 

CERNが新粒子発見

LHCはTwitterでこのほど1回の実験データ解析で5つの新素粒子群を観測したと発表した。これらの素粒子(状態)は全て3つのクゥオークを持つOmega-c-zero粒子の励起状態で、ΩC(3000)0、ΩC(3050)0、ΩC(3066)0、ΩC(3090)0、ΩC(3119)0と命名された。

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Credit: Twitter

 

今後の課題は新粒子の量子数と量子色力学(QCD)の枠組みでの位置付けを明らかにすることで、クオークとマルチクオーク状態の理解が進むものと期待される。拡張されたクォークはハドロンを表現する有効自由度と考えられ、量子数を構成するのに4 個以上のクォークが必要なマルチクォーク状態が存在するのかどうかは重要な問題であった。実際に4クオーク状態は最近の実験で発見(Phys. Rev. Lett. 112(2014)222002.)が相次いでいる。

今回の発見で大型加速器の国際共同チームによる実験アプローチの有効性が再認識されることになった。LHC衝突実験には85カ国から研究者が参画している。これからのLHCに期待されているのは、宇宙の起源や物質の理解でありまたそれを通して宇宙に存在する次元数の究極的ともいえる理解(注1)である。

(注1)ほとんど全ての次元数を扱う理論では基本的な力である重力と光は物理量として観測することができる。自然界の4つの力、電磁気力、弱い力、強い力、重力の中で(光を発生させる)電磁気力と重力の理解が難しい。これらに必要な次元数は3と考えられてきた。しかし空間と時間を含めた完全な記述にはさらに次元数が必要であることは、数学的に証明されている。さらに超ひも理論Super string theoryや最先端のM理論M-theoryでは10次元を扱う。

LHCは高次元数の存在を検証、グラビトンの詳細、ブラックホールの解明などの重要なステップを踏みつつ究極的な自然界の理解を目指している。現在はPhaeIIにあるLHCは今後10年間の実験スケジュールは埋まっていて、新しい発見が相次ぐことは容易に想像できる。

LHCの先見性には脱帽しかないが、そのILCはその後継機として提案されている。しかしLHCのように20年間、加速器実験で世界の先端にいるためには、国際共同チームの組織・運営スキルがものを言う。ハードウエアである加速器のスペックを決める前に、LHCPhaseIIとシームレスにつながり、その成果を発展させなければならない。

「どこに」、「何を」作るかの議論の前に「何をすべきか」をじっくり考える必要があるようだ。CERNが国際共同研究チーム(International Collaboration)で成功した背景には、スイス、ジュネーブが欧州の中心に位置する国際性豊かな都市であったことがある。欧州連合の科学技術の「顔」となったCERNの成果をしのぐためには、優秀な若い研究者にとって魅力のあるインフラが必要なのだろう。ILCをもし日本が誘致するならば、科学と文化の両面で研究者を惹きつける魅力が必要になる。簡単な話ではない。

 

 

 

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