放射光/加速器科学

トカマクが一歩前進〜逃走電子対策に進展

トカマクに関する最近の進展は二つある。①一つはシミュレーションでスケーリングメリットが無いことが示されたこと。これはITERのような超大型施設の必要が薄れたのであれば、実用化には朗報である。②次にこれと関係するがコンパクトな超伝導マグネットを用いた球形トカマクの性能が向上し、実用的な100MWクラスの小型炉が現実味を帯びてきたことである。

3GeV放射光のいま〜Society 5.0、量子科学技術、QSTへの流れ

筆者はこれまで3GeV放射光の重要性を加速器科学の立場で、記事をかいてきた。しかし最新の状況はいつのまにか国の大きな科学技術政策の一環として、新たな道を進み始めたようなので、その背景についてまとめてみたい。この問題は「3GeV放射光をどこにどのようなスペックでつくればコミュニテイにとって最適なのか」、という加速器施設の建設をめぐる通常の議論の枠を越えていることに気がついたからである。

LCLSのXFEL照射で分子内「ブラックホール?」状態

SLACのXFEL、LCLSは波長こそ、SACLAやEuropean XFELに及ばないがそのピークパワーは世界最大となる。そのXFELが最大パワーで分子を照射したときに何が起きるのか予測できなかったが、このほど分子に強力なパルスを照射した結果、分子内にいわばブラックホール状態が出現し、あたかも分子内の電子が吸い込まれるようにふるまうことが明らかになった(Nature 546, 129 (2017))。

コヒーレントX線回折でAPSが分域構造の3D観察に成功

回折限界リングの魅力はX線領域でコヒーレンスが提供されるというコヒーレント光源にある。もちろんエネルギーによってはすでに回折限界に到達している蓄積リングもあり、XFELでは積極的にコヒーレンスを使った実験が現実に進められている。X線領域でコヒーレンスを実現するのにはエミッタンスを下げる必要があり、高品位なビームが得られるライナック型光源(ERL)への期待のひとつでもあった。

消滅したコーネル大学ERL計画のコヒーレントフラックス(下図)は時間平均でXFEL(LCLS)と同程度で、しかも硬X線領域の光源としては蓄積リングの追随をゆるさない、はずであった。コーネル大学もKEKのERLも消えたが、最新の第4世代蓄積リングの追い上げは素晴らしく、やがてはERLに近づきそうな気配さえみせている。またこれから建設される蓄積リングの中にはアップグレードでリングをERL化しようとする計画もでてきている。

LHC後の次期加速器計画が高電圧パルス発生源開発で一歩前進

現在世界最大の陽子・陽子衝突型円形加速器LHCはアップグレード後の実験に入った。LHC後の計画は日本がホスト国として先導的な役割を果たす直線型加速器ILCが最有力とされているが、1兆円規模の財政出動には懐疑的な見方も多く、学術会議の公式見解は「時期尚早」つまり消極的否定にとどまり、現政権も積極的ではない。

世界を見渡すと着々と次の一手が計画されていて、時期を逸すればILCはタイミングを逃すかもしれないという不安もある。しかしILCにはCLICという伏線があり、このふたつの直線加速器は組織が統合されて万全を期す体制となっている。つまりILC、CLICどちらかが生き残れば、ポストLHCとして次期直線加速器が実現するRedundancyを持つ。このCLICや次期円形加速器(FCC: Future Circular Collider)の共通要素技術である高圧パルス発生装置をETHが開発した。

実現が前倒しになる放射光HALSについて

筆者はこの原稿を中国でかいている。ここの大学には800MeVの放射光がある。少し前に分子研のUVSOR(公平に見てUVSORII+)に追いつこうかというアップグレードが行われたばかり。下の写真のようにド派手なLED照明が目立つが、リングのエネルギーが上海の3.5GeVSSRFと北京に今年から建設が始まる6GeVのBAPSの間にあって、目立たない存在であった。そのためか少々けばけばしいが「積極的に目立とう」精神はユーザーには明るい夜道となり概ね好評のようだ。

Super LHCの一翼を担うLinac4の完成

現状のLHCは重心系運動エネルギー14TeV、最大ルミノシテイ1034 cm-2s-1で運転されている。周長27kmの世界最大の円形加速器としてエネルギーフロンテイアに君臨してきた。Super LHC(sLHC)は加速器の多くが初期の目標をクリアするとアップグレードで高ルミノシテイ実験によって精密化を目指すようにLHCのアップグレード版となる。

European XFELが発振に成功〜財政負担を軽減するドイツ式精算

DESYはすでに自由電子レーザー(FLASH)が軟X線XFELのパイオニア的存在であった。ヨアヒム・シュナイダー先生率いるFLASHプロジェクトは強力なリーダーシップでSLACのLCLSとともに先導的な役割を果たした。XFELはその後、硬X線領域に発展してSACLAが登場した。欧州は満を辞して短波長XFELを検討し、2009年から非営利企業の研究所としてEuropean XFEL(欧州XFEL)の建設を開始、1年遅れで2017年にコミッションにこぎつけた。

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