アメリカ留学を目指すあなたへ〜SLAC・スタンフォード大学滞在記 Part2〜

 さて、大学での研究環境や様子に関してですが、基本的には日本とあまり変わらず、周りの外国人ポスドク研究員を見回しても、研究者自身が装置の管理や実際の実験を行います。欧州では技官の方との明確な線引きがあるようですが、アメリカではそういったことはありませんでした。

 ただし、基本的に契約社会であるため、外部の業者に大型装置の移動や搬入などを依頼する際には、「どこまで」が「どちら」の責任かをはっきりさせなくてはならず、例えばドア一枚超えた部屋の中までの作業なのか、それとも建物の外の納品所までなのか?など細かい指定が必要になります。"ついでにちょっと動かして"なんてお願いは聞き入れられません。 

 

 安全管理、特に電気・レーザー使用・化学薬品使用・地震対策に関しては非常に厳しく、細かいチェックリストや指導の徹底などが義務づけられます。例えば分電盤に直結された電気配線は、一度接続されてしまうとこちら側で簡単に外すことは許されません。電源ケーブルなども安全上の観点からユーザー自身が作製することは認められず、業者にお願いしなくてはなりません。さらに各実験室やビルへの入室においては、いくつかのトレーニングを受けた上で、その建物のマネージャーにIDカードをアクティベートしてもらう必要があります。このトレーニングは基本的にはオンラインで受講する講義+簡単な試験形式ですが、時間にして30〜1時間、各部屋に対して10項目程度あるので、相当時間が取られます。もちろん基本的なトレーニングは共通している部分もありますので、一部端折れるものもありますが、やはり大変です。はしご・脚立を使うためのトレーニングなんてものもあります。さすがに、はしご・脚立を使っている人に対して、「トレーニング受けたか?」なんてチェックしている光景は見ませんでしたが・・・。  

 

 一方、放射線管理に関しては(少なくともSLAC内のSSRLでは)、日本の放射光施設に比べると「これでいいのかな」と思うほど実験ホール内への入・退出があまり厳しくない点に驚愕しました。ビームラインでの飲食も問題ありませんし、とあるビームラインでは事務室に行く道すがら、キッチンや冷蔵庫、自販機が設置されたユーザー控え室があるような状況で、PFやSPring-8での経験しかなかった私にとっては驚きの連続でした。

 SLAC/スタンフォード大に滞在している間、最も印象的だったこととしては、ある意味では当然のことですが、非常に多彩な国から来た研究者や学生さんが多いということです。写真は私の所属したHwang Groupの集合写真ですが、アメリカ人、イギリス人、中国人、韓国人、日本人から構成されるメンバーです。私が在籍していた頃はドイツから来たポスドクも一時的に在籍していました。文化が大きく違うため、物の見方や考え方の違いを目の当たりにしつつも、それに寛容なアメリカ(あるいはカリフォルニア特有?)の風土を感じられたことは、非常によかったと感じています。            

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 ここまでは比較的楽しそうな話題について紹介させてもらいましたが、当然ながらアメリカ生活の大変さという側面もありますので、簡単に触れておきたいと思います。アメリカで、特にポスドクとして雇われる場合、大学ごとに大まかな給料が決まっています。スタンフォード大の場合は、最大で年間$50,000くらいの給与をいただけます(地価やその地域の生活水準などによって決められているようです)。現在の為替レートで考えれば、学振PDの給与とだいたい同じくらいかちょっと多いくらいになると思います。そう考えると案外、それなりにゆとりのある生活できそうな気がするかもしれませんが、非常に高い税金や保険料がここにのしかかります。私の場合は妻が居ますので、家族までカバーする保険に入りますと、平均$4,200/月の給料のうち、保険に$500、税金や社会保障費に$1,000くらい支払った額が手元に残ります。  

 ここに家賃がかかってきます。スタンフォード大の周りは非常に地価が高騰しており、$3,000-4,000/月というところがほとんどですが、私は幸運にもSLACが管理している集合住宅に入れたため、$1,200弱くらいの家賃で済みました(そういうわけでスタンフォード大の周りでは、シェアハウスをしている学生さんも多いと聞きます)。ここに車の維持費、電気・ガス・水道などのユーティリティ、携帯電話代などがかかり、食費・雑費もだいたい月に$800-1,000くらいは見ておく必要がありますので、どこかに旅行に行こうとかそういうゆとりはほとんど無いことがわかると思います。  

 

 また、そもそもの医療費が日本よりも非常に高いため、高い保険料を支払っていても、実際に支払う額はそれなりに高いものになります。そう考えると、怪我や病気はできないわけです。以前、どこかの紙面で「海外生活では体力と資金が重要」という体験記を目にした記憶がありますが、まさにその通りで、この二つが無ければ非常に大変な生活になると思います。その意味でも、体力があるうち(若い間)に、資金を獲得(海外留学助成金など。学生さん向けには結構あります。)して、海外生活にチャレンジする、というのが一番いいかと思います。そういった大変な面もありますが、吸収できることもたくさんあるので、ぜひチャレンジしてみてもらいたいと思います。

 

アメリカ留学を目指すあなたへ〜SLAC・スタンフォード大学滞在記 Part1〜

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