ジルコニウムに代わる安全な原子炉燃料被覆合金

原子炉再稼働と廃炉関連以外の原子炉の技術開発の話題を聞く機会がめっきり減った。先進国では例外なく新規原子炉建設が遅々として進まない。経産省もようやく再生可能エネルギーを日本の主力電源とする方向に舵を切りつつあるが、原子力はトーンダウンしながらも、温室効果ガス対応として存続を否定していない。

 

原子力存続は電源多様化の中でやむを得ないのであれば、原子炉関連の技術に進展を期待したいところだが、米国のオークリッジ国立研究所(ONRL)は多岐にわたるエネルギー関連技術の研究開発にシフトする中で、原子力関連の技術開発を怠っていない。

オークリッジ国立研究所の原子炉技術開発チームは原子炉安全性の基本である燃料棒の安全性に関する新しい成果を発表した。燃料棒に使われてきたジルコニウムは腐食やクラッド(水垢)、水素発生など多くの問題を抱えていた。研究チームはジルコニウムの代わりに鉄、クロムとアルミニウムの新合金はを用いた新型燃料棒を開発した。

 

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Credit: ONRL

 

過去60年間民間の原子力発電所の燃料棒は、ジルコニウム合金で被覆された構造であった。ジルコニウムが採用された経緯は、1950年代に原子炉を動力源とする空母や潜水艦に使用されたことがきっかけであった。その後、クラッド耐性を主眼として軍事用だけでなく世界中の軽水炉に採用され原子力業界を支配した。

ジルコニウムは原子炉を駆動する中性子をほとんど吸収しないため、ジルコニウム合金はクラッド対策として合理的ではあある。しかし冷却水を失うと、ジルコニウムは水素発生源として問題を引き起こす。

 

平均的な炉心には、20〜40トンのジルコニウム金属が使われる。そのジルコニウムは高温で蒸気と反応し、反応すると多くの熱と水素を生成する。崩壊熱に新たな熱源が加われば原子炉内に水素が加熱され、水素爆発を引き起こす。

ゼネラルエレクトリックが主導するコンソーシアムは、事故の際に可能な限り少ない水素を発生させるジルコニウムフリーの合金を燃料棒被覆に採用した。新しい材料の燃料棒被覆は腐食、熱力学、合金製造の各分野を専門とする複数の研究所が分担して評価を行い、長時間を要する試験期間を短縮することができた。実証試験はORNLの高フラックス同位体リアクター、アイダホ国立研究所の実験炉、ノルウェーのハルデン研究炉で行われた。

新合金の製造は6年間を要した。現新しい被覆材は、2月のテストのために、ジョージア州南部核核兵器ハッチ原子力発電所の原子炉に設置され、その後の試験運転が予定されている。

 

材料開発の時短

原子力に限らず現在の新材料開発は試行錯誤に頼らない。材料組成を最適化して求められる物性をえる作業をAIにやらせる事例も報告されている。昔ながらの経験に頼るのではなく設計が計算機コードで最適化、出来上がった材料試験は分担して時短をする、のが一般的になった。日本の材料開発研究にも計算機コードの活用と放射光のように複数の分析評価を一箇所で行う効率の良さとスピード感が求められているように思う。

蛇足ながら再生可能エネルギーを主力電源とする方針にシフトするなら国策を見直さなくてはならないだろう。また多様化を貫いて既存原子炉を使い切るなら技術開発と専門家の育成は継続しなければならないだろう。

 

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