コアシェル型ナノチューブによる人工光合成

化石燃料の燃焼ネルギーは全世界で毎秒数テラワット(1012W)とされている。したがって再生可能エネルギーでこれを置き換えるには、テラワットオーダーのエネルギーを創出しなければならない。現在これに相当する仕事をこなしているのは人工光合成だけである。

 

CO2の還元とH2Oの酸化のふたつのプロセスをサイクリックに行う光合成では、これらは膜物質で仕切られているが、エネルギー効率は膜の厚みが薄いほど高く理想的にはナノメートルにしたい。

イスラエルのベン=グリオン大学の研究チームは、このほどコアシェル型ナノチューブアレイを使った数cm角の人工光合成デバイス(注1)を開発した(Edri et al., ACS Nano 12, 533, 2018)。研究チームが試作した膜はシリコンロッドのアレイをクライオエッチングで長さ数100ナノメートルで壁厚が10ナノメートルに加工したものである。

(注1)植物の光合成を模した厳密な意味での人工光合成のエネルギー効率は0.1%程度にすぎないが、シリコンベースの人工葉(ワイヤレス太陽光水分解)やここで紹介する光合成固体デバイスは実用的効率(15%以上)を狙っている。日本でもNEDO予算で企業の応用研究が活発化している。

 

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Credit: semanticscholar.org

 

ナノチューブ内側は触媒としてコバルト酸化物で覆われており、H2O酸化反応(水素発生と酸素発生)が進行する。この部分はCO2還元反応を行うシリカ長薄膜面と仕切られている。後者はプロトン輸送の酸素非透過膜となる。この光合成システムの特徴は、電子伝導のための「柔らかい」有機分子ワイヤと固体酸化物ベースのナノ構造体を実現したことである。

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Credit: ACS Nano

研究チームはこのデバイスには直接表面パターニングを必要としないガリウム砒素(GaAs)太陽電池上に成長したシリカ(SiO 2)ナノ球アレイを用いて太陽光吸収率と光電流増強を試みた。研究チームはナノ構造間の共鳴結合の影響を走査型光電流顕微鏡法で調べた結果、ナノ構造アレイ内の薄膜干渉とWhispering Gallery共鳴の組み合わせで、吸収率と光電流が20%以上の向上することを見出した。

 

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