Liイオンバッテリーのデンドライトに自己修復機能

携帯機器から始まったLiイオンバッテリーの利用は、EVや再生可能エネルギーの普及に大容量蓄電システムが不可欠となると、利用分野が一気に増えて研究開発も加速した。しかし電極材料の劣化は充放電サイクルの寿命や事故に大きく影響する。

 

市販品の大半はLiイオンバッテリー正極にLi金属酸化物、負極にグラファイトが用いられている。Li原子1個あたり炭素原子でインンターカレートされるグラファイト負極の一般のLiイオンバッテリーのエネルギー密度をあげるにはLi密度を上げる必要がある。エネルギー密度を高めようとすると、負極材料は究極的に還元された状態であるLi金属が理想的である。

しかし金属Liの成長が均一ではないため、負極表面に樹枝状のデンドライトが形成されることで電極は著しく劣化してしまう。このような異常成長は金属膜を成長させる際に気相でも電着でも観測されるいわゆる「3D成長」現象であり、成長速度を原子レベルで制御しない限り回避することは難しい。

 

ペンサコーラ工科大学の研究チームはバッテリーの発熱を利用して、一度形成されたデンドライトを拡散して平坦化する技術を開発した(Li et al., Science 359, 1513, 2018)。研究チームは負極金属のジュール熱を利用して、デンドライトの面内拡散を増大できないか調べ、Li-Li対称セルおよびLi-Sセルで自己修復効果を実証した。気相成長で言えば基板温度を上げて表面拡散増大させたことに相当する。

自己修復効果は電流密度が〜9mA/cm2以上で、デンドライトの自己発熱が生じ表面拡散が助長されることがわかった。金属Liを使用した次世代型Liイオンバッテリーの普及が近いと期待されている。

 

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Credit: Science

上図はLi-Li対称セルにおけるLi成長モルフォロジー。(A , E) ~0.75 mA /cm2, (B , F) ~4.5 mA /cm2, (C , G) ~9 mA /cm2, (D , H) ~15 mA /cm2

 

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