ナノワイヤーのレーザー加熱によるマイクロ核融合が過去最高効率を達成

核融合といえばトカマク型でもレーザー圧縮型でも巨大な装置が必要と考える人が多いであろう。その対極にあるのが、桁違いにスケールダウンしたマイクロ核融合である。コロラド州立大学の研究チームは大出力レーザーを用いて整列したナノワイヤーでマイクロ核融合実験に成功した(Curtis et al., Nature Comm. 9:1077, 2018)。

 

マイクロ核融合の世界

核融合実験設備が巨大である理由はエネルギーを取り出して発電する商業利用を目的としているためである。研究チームはテーブルトップの大出力レーザーを改造してナノワイヤーを瞬間的に高温に加熱してつくられた高温高密度プラズマでマイクロ核融合を起こし中性子発生を確認した(下図)。 

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Credit: Nature Comm.

 

重水素化ポリエチレン・ナノワイヤー実験(注1)(下図)は平板ターゲットに比べて500倍となるジュールあたり106個の中性子数(入力レーザーの単位エネルギーあたりの中性子数)を記録した。

(注1)ポリエチレンの水素を重水素で置換したもの

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Credit: Nature Comm. 

 

マイクロ核融合は商業発電には向かないものの、核融合の基礎データが得られるばかりでなく、発生する中性子をイメージングに応用するなど応用面でも発展が期待されている。

ITERも建設が始まり世界最大のトカマク型核融合ろの点火が予定されている一方で、小型の球形超伝導磁石プラズマ閉じ込めの研究開発も企業が率先して急ピッチで進められており、100MWクラスの発電システムを目指している。さなり小さいスケールのマイクロ核融合が核融合研究の先駆けとなると期待されている。核融合反応がテーブルで可能になった背景にはナノ構造体の製造技術と大出力短パルスレーザーの進歩がある。

 

止まらない小型化へのシフト

トカマク核融合のスケーリング則が成立しないという論文は小型核融合の根拠になったが、原子炉も(1000MWクラスの大型原子炉が建設が困難になったこともあるが)100MWクラスの小型で安全な原子炉研究開発が加速している現実は、核反応のスケールダウンが時代の流れとなったことを示唆しているように思える。

小型化という核反応実験の傾向の背景には巨大な装置は例え実現できても、資金や土地の制約で現実的出ない、という理由もあるのかもしれない。発電・送電網にしても一昔前は大都市の近郊に巨大な原発を設置して星状に送電網を広げるというのが一般的であった。しかし再生可能エネルギーの比率が高まり発電機能も分散したスマート送電網の要請には100MWクラスの小型発電施設を送電網に組み込むという分散型へ移行が模索されている。

 

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