有機系太陽電池の開発指針となる一重項分裂

一重項分裂(Singlet fission)は有機系太陽電池の性能を飛躍的に高める鍵となるとして脚光を浴びている。バークレイ研のエネルギー関連物質の励起状態を研究している計算機科学チームは計算機シミュレーションで0.1フェムト秒スケールで起きる一重項分裂(注1)によってエネルギー返還効率が大きく影響されることを見出した(Refaely-Abramson et al., Phy. Rev. Lett. 119, 267401, 2017)。

 

(注1)ひとつの励起一重項状態からスピン許容遷移によりふたつの励起三重項状態が出来る過程。一個のフォトンが吸収されてできる励起子から、このメカニズム(励起子分裂)により二個の励起子が生成されることで、エネルギー効率を倍増させることができる。日本でも東北大の研究チームがこの課題に取り組んでいる。

バークレイ研の研究チームはペンタセン分子を対象として、ab-initioグリーン関数法による計算機シミュレーションによって、フォトンの吸収でできた1組の励起子(電子・正孔ペア)一重項が三重項2組に分裂する現象を見出した。励起子分裂によって吸収フォトン数に対する電荷量が倍増するので、エネルギー返還効率を高めることができる。

東北大グループの結果を含むこれまでの研究が数個の分子についてのもので、一重項分裂の扱いが厳密ではなかったが、今回のシミュレーションではペンタセン結晶の対称性を取り込み、結晶全体の現実的な計算を行った。

 

3 newdiscovery

Credit: バークレイ研

 

この手法はペンタセン以外の多くの分子結晶に適用できる。この研究により一重項分裂は計算するユニット中の分子数とそれらの対称性(特に180度回転対称性とミラー対称性)に強く依存する。一重項分裂によって電荷担体密度を倍増させることができたら、次は電子を分離して(トラップされずに)損失が少ない状態で電極輸送される必要がある(下図)。電荷形成と輸送の効率化が揃えば環境に優しい有機系太陽電池は飛躍的に普及すると期待されている。

 

Singlet Fission diagram

Credit: Bardeen Lab, UC Riverside

 

実験的にこの時間領域の分光を行うにはフェムト秒スケールでは間に合わない。アト秒分光と呼ぶ超高速レーザーパルスが使われる。現在、最高時間分解能は43アト秒である。一重項分裂はアト秒分光の活躍が期待される分野となる。

 

関連記事


アト秒領域の時間分解光電子分光で発見された光電効果の新現象

世界最短(43アト秒)パルスX線レーザー
LCLS+LCLS-IIが先端加速技術で挑むXFEL先端サイエンス

 

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.