変わりゆく国主導プロジェクト〜核融合研究にみる官から民への潮流

スペースX社に代表される宇宙開発における民間企業の躍進は目を見張るものがある。宇宙開発といえば米国のNASA、空軍の国家主導型によって推進されてきた。しかし現在では官から民への転換で大型ロケット開発から打ち上げ、各種プローブの軌道投入や惑星間移動に到るまで、広範囲な宇宙開発の推進力になりつつある。

これは国との協力関係を保ちつつ、企業が独自に立案し資金を集めて推敲する自立型である点で、国からの民間依託の枠とは異なることに注意したい。ひと昔のイメージでは企業が宇宙開発を独力で推進しようとすれば安全性や資金調達で不安があるのではないかというものだったが、現状は逆で企業主導で開発することのメリットが認められるようになった。

 

核融合におけるプロジェクトの意味

一方、同様の動きは核融合研究にも活発化している。核融合炉開発ではトカマク型(磁場閉じ込め)の国際共同プロジェクトITERがフランスに建設されているが、慣性閉じ込め(レーザー圧縮)をはじめとして様々な核融合方式の国家プロジェクトが存在する。一方で新たな潮流として企業が独自に資金を集めて小型核融合炉の開発を進めている。ITERが建設コストの高騰でプラズマ点火時期が当初計画(2025年)から大幅に遅れることが決定的となった中で、企業の開発は2020年代の実験を目指しており、国際共同プロジェクトに先駆けて実用化が視野に入ってきた。

 

企業による小型核融合炉開発

こうした企業主導の核融合炉の計画の中でここでは、最もよく知られている航空・軍事企業であるロッキード・マーチン(米国)、Fusion Power Corp(米国)、General Fusion(カナダ)、Tokamak Energy Ltd.(英国)の4例を紹介する。

 

ロッキード・マーチン

Mirror-Cusp複合(高ベータ核融合炉)と呼ばれる小型核融合炉はリング状のカスプによる磁場閉じ込めで、2016年に最新型小型核融合炉のAPSポスター発表があった。公表データが極めて少ないが、磁場閉じ込めの変形でプラズマ閉じ込め圧力が高いため、磁場閉じ込め型の小型化に向いている。同社は2025年までに出力100MWを目指している。下図はその概念図。 

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Credit: Lockheed-Martin

 

Fusion Power Corp

Fusion Power Corpは重イオン加速器を用いるHDIF(Heavy Ion Driven Internal Fusion)を採用した。HDIFは慣性核融合方式の一つでローレンス・バークレイ研究所は 高品質、高密度のビームを生成するように設計さ.れた小型の誘導加速器NDCX-IIを建設している。NDCX-IIは、約 200 億個の荷電リチウムイオンのパル.スビームを固体ターゲットに衝突させて重イオン核融合を目指している。Fusion Poer CopのHDIFは大型で、小型実用炉と分類するのは抵抗があるが国主導プロジェクトが立ち上がっていることからもわかるように注目される方式のようだ。

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Credit: Fusion Power Corp

 

General Fusion

カナダの物理学者が起業したGeneral Fusionは衝撃波磁化標的核融合(MTF)の開発を行なっている。磁場閉じ込めと慣性核融合の中間にあるMTFは慣性核融合より低いプラズマピーク密度(1026 ions/cm3)と短い閉じ込め時間(100μ秒)が小型炉に有利で、電力も少なくて済む。同社は小型の試験機を製作して地道にデータを集め説得力ある計画で資金を募ることに成功した。General Fusionは実証炉に近いところにいるとして実証期稼働が期待されている。

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Credit: General Fusion

 

Tokamak Energy Ltd.

Tokamak Energy Ltd.はトカマク方式だが超伝導磁石を用いた球状プラズマ方式に取り組んでいる。また磁場閉じ込めに超伝導磁石を使う手法が一般化しており、超伝導磁石を用いた小型核融合炉研究はマックス・プランク研究所のヘリカル型、MIT、韓国のKSTARなど多くの研究炉がある。いずれの場合でも高温超伝導材料で発生磁場磁場を上げ、容器をコンパクトにしてプラズマ加熱の効率を上げるのがポイントとなる。

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Credit: Tokamak Fusion Ltd.

 

最新の研究によれば磁場閉じ込め装置のスケールとプラズマ発生と出力費には関係が薄いという。これはこれまでプラズマ閉じ込めの効率は容器が大型になるほど増大すると考えられてきた従来の開発方針が覆されるという結論である。トカマクの小型化という現実的な方針は最近のトカマク方式におけるスケーリングメリットを否定した論文と矛盾しない。なお企業による核融合研究開発の進展は関連学会誌(J. Plasma Fusion Res. 18 (2017))でも取り上げられ、企業研究を含めて実用化を考えることが認識されるようになった。

 

ITERの失速

一方ではITERの進展に大幅な遅れが出ていることは国内では取り上げられていないが、トランプ政権は2017-2018年度予算を1.05億ドルから5,000万ドルへ50%削減、2018年度は1.2億ドルから6,300万ドルに削減した。ITER参加国には10年間の建設期間中の脱退は認められていない。また負担金に大幅な縮小があると建設に遅れが生じ、予定期間に完成しない恐れがあることから、ITER側は米国に当初計画通りの負担額を要求している。実際には負担金は建設の一部の構成部品をその国の企業(注1)が製造して納入する方式をとっているため、予算の縮小は構成部品が期日に届かないことを意味する。

ITERの計画の遅れはJT-60アップグレードに影響を及ぼしかねない。大型施設を10年スケールで建設することは、財政負担を軽くできても先々の経済状態に左右されることや完成までに他の技術が進歩していくことを設計に取り込めないと計画が中断されたり陳腐化する恐れがあることを認識しなければならない。企業主導のデメリットも少なくないが、将来性のある企業に国が支援するなど国の開発体制も見直すべきかもしれない。

 

2025-2030年の核融合の実用化が色濃くなったがそれはITERに続く巨大なTOKAMAKU炉や大出力レーザーではない可能性が高くなった。2025年のITER点火は困難になったがITERが稼働しても熱出力利用技術はその後に持ち越される。1000 MWクラスの原発に匹敵する発電所より先に100MWクラスの核融合炉が先に実用化されるることは確実のようだ。将来のエネルギー比率や温室効果ガスの排出予測も見直すべき時期に来たのではないだろうか。なお原発でも100MWクラスの小型原子炉を開発する企業が増えている。1000MWクラスの発電所は都市部に遠くない場所に設置しなければならないが、100MWクラスを送電網に複数組みこむことになれば、送電体制も大きな変革を迎える。小型かの波がエネルギー事業の世界にまで及んで来たことは考え深い。

 

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