CO2をCOに還元する単サイト触媒〜エネルギー変換効率が12.7%に

1日で排出されるCO2は200万ポンド(91万kg)。CO2規制がパリ議定書の筋書き通りに進まないが、仮に規制に熱心な先進国が忠実に実践したとしても、米国と中国が本腰を入れない限り全世界で見れば「焼け石に水」である。この2国が石炭火力を諦める可能性は極めて低いことから、規制というアプローチではCO2濃度を減らすことはできそうにない。

 

現実的にはそのため排出されるCO2を回収して有効利用するために空気中のCO2固定すなわちCO2還元反応への関心が高まっている。強固なC-O結合のために困難さは容易に想定できるが、空中窒素の固定でも同じことであったはずである。触媒の力を借りてCO2をCOに還元する研究テーマが活発になっている。ハーバード大学の研究グループは太陽光をエネルギー源とし、電気化学的にCO2をCOに還元する装置を開発した。

太陽光とCO2と水からCOと酸素を製造するシステムのエネルギー効率は自然の光合成や光触媒より1桁大きい12.7%で、工業的に要求される10%を超えている(Jiang et al., Chem 2017)。開発された装置は二つの容器がイオン交換膜で仕切られたコンパクトな構造で、片方の電極で太陽光で水から酸素とプロトンがつくられる。プロトンはイオン交換膜を透過して単サイト触媒電極でCO2と反応してCOと水分子ができる。日本でもJSTでCO2のメタン化に関する研究があるがエネルギー効率は低い。

 

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Credit: jsp

 

これまでの人工光合成の触媒はほとんどがプロトン同士の反応(水素発生反応)であった。研究グループは水素発生が起こらないでプロトンが対極に輸送されCO2と還元反応させる選択性を高めることを模索した。しかしそのための触媒元素はAu、Agで高価なため実用化には適さない。そこで研究グループは低コスト材料として金属Ni、Coに着目したがこれらは水素発生触媒でCOで触媒毒でもあった。

研究グループはNi単原子をグラフェン網目に固定して原子間距離を離して金属間相互作用を減らすことでこの問題を解決した。このナノ構造Ni単原子触媒はCO2とプロトンと反応してCOと水が高効率で発生することがわかった。下図のAPT(Atom Probe Tomography)のイメージデータA(白線は10nmスケール)で黄色の円で囲った領域の分析結果がE、F(白線は5nmスケール)でNiの配位数が少なく分散されていることがわかる。またD(白線は1nmスケール)は横方向からみたAの拡大図でグラフェン中に取り込まれたNi原子が示されている。

 

10.1016j.chempr.2017.09.014

Credit: Chem

 

エネルギー変換効率が12.7%なので、スケールアップによってCO2を様々な化学反応の原材料となるCOに還元できる。空気中から回収した炭素が材料として生まれ変わることが現実味を帯びてきた。触媒の最適化は単原子で行うことでバルク金属の性質にとらわれずに元素の固有の特徴を生かすことが可能になってきた。

STEM、XAS、FTIRなどのナノツールが総動員されたこの研究は触媒科学の新しい展望がナノ科学にあることを示している。光触媒で先鞭をつけた日本だが、米国の先端ナノツールを使いこなす米国に渡って教育を受けた若い中国人研究者のポテンシャルでアドバンテージはなくなっているかもしれない。ナノツールの広域利用と若い研究者層の有機的な連携が望まれる。

 

なおこの研究で原子イメージングでは圧倒的な強みのATP(Atom Probe Tomography)については、別項で詳しく取り上げる予定でいる。

 

 

 

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