ナノ構造で高効率水素発生触媒となるMOS2

大気中のCO2濃度を低減するにはいうまでもなく排出量を規制するだけではなく空気中CO2の固定(カーボンキャプチャ)が必要である。CO2を回収するには発電所など大量に排出される施設で、排出ガスから選別して回収するのが手っ取り早い。

 

地熱発電所の多いアイスランドでは回収したCO2は液化して地中もしくは海底に貯蔵することも試みられている。しかし世界中でカーボンキャプチャを行わなければ、容易に大気濃度を低下することはできない。そこで光合成に習って人工光合成の研究開発が加速している。

しかし問題は光合成のエネルギー変換効率が低いことである。プラチナ触媒を用いれば効率は増大するがコストが高い。そこでサンデイア国立研究所とカリフォルニア大学の研究グループは表面の微細構造を増大させて、実質的にプラチナ触媒と同等な水素発生触媒を低コスト材料(MoS2)で製造することに成功した(Chen et al., Advance Materials 29 1703863, 2017)。下に示したのは別グループによるMoS2超薄膜による水素発生の模式図。

 

Nanostructured Sheets of Molybdenum and Sulfur in a Microwave Built Catalyst copy

Credit: DOE/ Office of Science

 

花弁状の微細構造でMoS2の表面積は3倍に増大する。表面積が増えたMoS2膜は水素発生触媒となる。研究グループはMOS2を水と混合してミクロンサイズの液滴として自由落下させることによって、水分が蒸発し特徴的な花弁状のナノ構造(下のSEMイメージ)を作りながら基板状に成長する。

 

superiorhydr

Credit: Sandia National Laboratory

 

水素発生のエネルギー効率はプラチナ金属を使ったシングルサイト触媒は極めて高い数値を示しているが、工業的には貴金属触媒を使わない低コスト実用材料が模索されている。光触媒の効率は1-2%だが10%以上のエネルギー効率が必要とされている。一部にはそのような値が達成されたという論文もあるがエネルギー効率の定義次第であるという批判もあり議論を呼んでいる。

最近のエネルギー科学の中心課題は水素発生とCO2固定で燃料を合成する触媒研究となった。ナノ構造と放射光のようなナノプローブで開発が加速している。光合成の知恵が実用に生かされる日も近いかもしれない。

 

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