ウランを触媒とする酸化的付加反応〜Fブロック触媒への期待

ウランと酸化的付加とは共通性が無いように見えるのは昔のこと。マンチェスター大学の最新の研究によると新たにウランがRhやPdなど遷移金属の代わり触媒として使われる可能性がある。またウランはランタノイドや遷移金属の中間的な電子状態のため、両者の触媒活性を併せ持つ可能性がある(Gardener et al., Nature Comm. 8: 1898, 2017)。

 

還元的脱離と並んで有機化学の基本的な反応である酸化的付加反応(注1)では、これまで触媒金属としてd-電子を持つ遷移金属が用いられ、より外側に局在するf-電子を最外殻に持つ金属は使われることはなかった。その理由はこれらの金属は不可逆的反応触媒だったり多電子酸化(還元)反応を起こすからである。

(注1)酸化的付加では空の配位場と、比較的低い酸化数を持つ金属錯体が、酸化を受けながら、共有結合へ挿入 (insertion)する。そのとき、酸化数(形式酸化数)と、中心金属上の電子の数がともに +2 増加する。

 

この研究では不飽和ウラン(III)化合物からアゾベンゼンの酸化的付加反応により、ウラン(V)イミド化合物が生成されることがわかった。またこのイミドは熱分解で還元的脱離反応を行いアゾベンゼンに戻る。これらの実験事実によってウランを触媒とした、すなわちFブロック金属による酸化的付加と逆反応の還元的脱離反応の触媒として機能することが明らかになった。

 

s41467 017 01363 0

Credit: Nature Comm.

 

上図は計算による反応座標を示す。PhNNPhとウランの2段階反応で(PhNU)2が生成され酸化的付加反応の触媒となる時のエネルギー準位(数値はギブス自由エネルギー)が示されている。

この研究によってランタノイド、アクチノイドすなわちFブロック元素の触媒への応用が可能であることが実証された。すでにCeの特異な触媒作用がオンサイトエントロピーに基づくことが明らかにされるなど、Fブロック元素の応用の可能性は広がりを見せている。

東工大の元素戦略センターに見られるように、これまでの元素の概念にとらわれずに視野を広げようとする物質科学の方向性も盛んになってきている。Fブロック元素へフロンテイアが移理、遷移金属に関する教科書的な知識は過去のものとなるかもしれない。d電子の世界からf電子にフロンテイアが広がりつつある。

 

 

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