エチレンを製造する光合成システム

貯蔵可能なエネルギー源として水素が注目されている。化石燃料の枯渇は40-50年先と考えられているが、パリ協定に夜CO2排出規制が暗礁に乗り上げる一方で大気中のCO2濃度は上昇し続けており、海水の酸性化による漁業資源への悪影響が食糧危機に繋がるからである。そのため空気中のCO2から燃料アルコール(カーボンニュートラル燃料)や蟻酸を製造するための触媒研究が盛んになってきた。

 

シンガポール国立大学の研究グループは太陽光と水、CO2のみで常温でエチレンガスを製造する装置を開発した。世界の生産量は1.7億トンに達するエチレンはポリエチレン合成の材料であり、合成ゴム、プラスチック、合成繊維の原材料で、2020年までの需要は2.2億トンが予測されている。

工業的なエチレン合成は750-950Cで化石燃料の水蒸気熱分解によるが、大量の大気中へのCO2排出量も大きい(1トンのエチレン製造で2トンのCO2排出)。そのためエチレンの製造工程を見直されつつあるが、研究グループは2015年に電力をエネルギー源として金属(Cu)触媒を利用する反応の研究を開始した。

今回の研究(Ren D; Loo NWX; Gong L; Yeo BS*, "Continuous production of ethylene from carbon dioxide and water using intermittent sunlight" ACS SUSTAINABLE CHEMISTRY & ENGINEERING DOI: 10.1021/acssuschemeng.7b02110 Published: 2017

 

)ではCu触媒の代わりに人工光合成システムを用い、エネルギー源は太陽光のみとなる。エチレン製造反応のファラデー効率(注1)は30%でエネルギー変換効率は自然の光合成と同じ程度である。

(注1)ファラデー効率=理論消費量/(入口燃料流量-出口燃料流量)

 

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Credit: pubs.rsc.org

 

研究グループが試作した装置では製造したエチレンを燃料とする燃料電池で発電も行う。また研究グループは今後、スケールアップのための研究開発を予定しており、将来的にはメタノール、エタノールといった液体燃料製造への応用も考えている。

 

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