メタンからCO2排出なしで水素製造に成功

 

CO2排出問題を解決しようとすれば、化石燃料の使用をやめなければならないが、今の所それに代わるクリーンエネルギーがない、というジレンマに陥いる。原子力は運転時のCO2排出では秀でているが、燃料製造と廃棄物の処分リスクを考慮すると、人類の求めるオンリーワン的な持続的クリーンエネルギーではないだろう。

 

残された時間は40-50年。この間の人口増加を考慮するとエネルギー危機それより早く訪れる。そこで核融合を含めた新エネルギーの研究開発を加速し、当面は多様な再生可能エネルギーと火力のクリーン化を同時に推し進めるしかない。シェールガス・オイルの増産でエネルギー源を確保しながら、米国がエネルギー基礎科学で新エネルギー開拓に真剣に取り組んでいるのはそのためである。これには光触媒による水素製造技術や空気中のCO2を還元して液体燃料(カーボンニュートラル燃料)を製造する技術が含まれる。またエネルギー基礎科学の予算で放射光や自由電子レーザーが建設・運営され、新エネルギー技術に直結する触媒科学の成果を上げている。

 

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究グループは安価なメタンガスをCO2を排出しないで燃料水素を製造する技術を開発している。最新の研究で溶融金属触媒を用いてメタンを分解し水素と炭素を分離することに成功した(Upham et al., Science 358, 917, 2017)。

今回、開発された新しい水素製造技術は今後4-50年に渡って、低コストのクリーンな燃料(水素)製造法としてCO2排出量低減に寄与するものと期待されている。天然ガスの主要成分であるメタンは一般家庭、産業、輸送分野で燃焼による熱エネルギー源として使われる。

水蒸気改質法(SMR)は代表的な水素製造技術であるが、膨大なエネルギーを使うためエネルギー効率が悪く、必然的にCO2排出を避けられない。誕ん租税を含めれば、SMRは低コストの水素製造には適さない。

研究グループは溶融金属と溶融塩を触媒とすることによって、触媒活性を向上させ、メタンを単ステップで水素に変換するもので、SMRより低コストであるとともに水素と炭素を完全に分離でき、残渣の炭素は固体となるので大気中に放出されることがない。

 

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Credit: Science

 

メタンガスバブルは触媒表面で分解し、水素は上昇していき反応炉の上部で回収され、炭素は溶融金属表面に固体で残りやがて剥がれ落ちるため、触媒表面の活性は保たれる。これまでの固体触媒に比べて溶融金属触媒は表面活性に持続性がある。実際には溶融金属(液体金属)は水素を取り込みやすく活性(水素との親和性)が高められる。また水素と炭素が原料から取り除かれることで平衡が変化して、より多くのメタンが分解する。

今後、石炭や天然ガス供給量を増大してメタンの供給量を確保できれば水素製造能力を引き上げることは可能となるため、ロイヤル・ダッチ・シェルが興味を示し研究支援が予定されている。中国のように安価な化石燃料に依存度が大きい国では排出量規制が難しいが、水素燃料に転換することで低コストのクリーンエネルギー化が可能となる。下図は溶融金属(合金)にNi-Biを使用した場合の水素発生(A)と各種触媒の活性化エネルギー(kJ)。

 

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Credit: Science

燃料電池と水素の組み合わせは貯蔵可能なクリーンエネルギーとして有望であルガ水分解による水素製造に頼ると電力を消費するのでメリットが薄れる。同様に世界中の内燃機関自動車をEVに変えたところで火力発電がなくならない限りCO2排出量でEVの優位性はない。これまで大規模な水素製造技術といえばSMRであったが、この研究でメタンから水素を製造し炭素を回収することで、カーボンキャプチャも同時にできて、必要な時に燃料電池で発電することが可能になる。エネルギー源が多様であるように新エネルギー源にも多様性が求められるが、メタンからの水素製造はFCVや水素社会へ道が遠くないことを想起させる。

 

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