最新の研究で書き換えられるチェルノブイリ事故の瞬間

 

史上最も過酷な事故(シビアアクシデント)として知られるチルノブイリ事故は原子力神話が崩れるきっかけとなった。もしこの事故がなければ原子炉建設の勢いは減速しなかっただろうし、ソ連崩壊も遅かっただろう。そのためこれまでに事故原因に関しては膨大な研究があるが、最新の研究によって事故の瞬間が書き換えられることになった。

 

スウエーデンの研究グループによる研究で、チェルノブイリ原子炉建物で起きた2度の爆発の最初のものはこれまで考えられてきた水蒸気爆発ではなく、核反応によるものであることがわかった(Geer et al., Nuclear Technology online Nov. 16, 2017)。

研究グループはクローピンラジウム研究所が測定した数日後のキセノン同位体のデータに基づいて、最初の爆発で原子炉心の急激な核反応で爆発し、燃料デブリが上空に吹き飛んだ後に、水蒸気爆発が起きたと考えている。キセノン同位体は核分裂反応の生成物として知られているが、チェルノブイリからスエーデンに達したプルームは炉心で得られる平衡に達した同位体であった(下図)。

 

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Credit: Geer et al., Nuclear Technology online Nov. 16, 2017

 

当時の気象条件を考慮するとチェルノブイリ炉のキセノンは燃料デブリのものと結論できる。このことは最初の爆発は原子炉の外で起きた水蒸気爆発ではないこと、核反応そのもの、つまり原子炉心の爆発で燃料デブリが飛び散ったことを示している。準核爆発であれば原子炉底辺部が損傷が少ないことと矛盾しない。また水蒸気爆発では底辺部を融解するほど高温にならず、圧力で下方に(4m)押し込んだだけであることも、説明できる。

事故は熱中性子によって核反応が急激に起きて(小さな核爆発のように)底辺部の燃料が上空2.5-3kmの高さまで吹き飛んだ。水蒸気爆発はその2.7秒後に起きた。この研究でチェルノブイリ事故の2度の爆発の真相が明らかになった。

現在も下図の赤の地域は立ち入り禁止である。チェルノブイリ事故は消し去ることができない人類の原子力神話が残した「汚点」である。また事故をどのように隠蔽しても核反応は特徴的な同位体という「物的証拠」を残すので、世界中の観測網でやがては明らかにされる。

 

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Credit: Wiki

 

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