空気中のCO2で燃料合成〜ナノ触媒による炭素固定

 

EVが急速に普及しつつある。英国は2040年までに化石燃料の販売禁止を目指しており、ドイツ、フランスでも内燃機関の車からゼロエミッションのEV、FCVへの転換が国策となっている。しかし現在のEV販売台数から見れば全世界で約12.6億台(2015年)となる内燃機関の車を置き換えるのは現実的ではない。

 

EV化で予想される電力不足

しかしEV化を国策で強制してもEVは電力を使うだけであり、化石燃料の代替えエネルギーをどうするかという基本的な問題は残る。仮にすべての内燃機関の車がEV化すると、英国だけで原発10基に相当する電力が不足すると予測されている。EVには発電、FCVでは水素製造の能力拡充とインフラ整備が不可欠だが容易に解決できる課題ではない。

エネルギー不足に陥らず既存の車を生かす方法として、空気中のCO2を固定によるカーボンニュートラル燃料(アルコール)を製造がある。夢のような話だが植物は水とCO2から太陽エネルギーで炭水化物を製造している。また空気中の窒素固定は実用化されて久しい。

しかし植物の光合成のエネルギー変換効率は低く、もし人工光合成が実現したとしても実用的な燃料製造は不可能である。一方、人工葉(注1)や光触媒で太陽エネルギーを使う水分解で水素を製造する研究や空気中のCO2を太陽エネルギーで還元し燃料アルコールを合成する研究が注目を集めている。

(注1)太陽電池の電極で水の電気分解を行う手法の中のワイアレス型水分解に相当する。正負電極(触媒)によって水素と酸素を分離して製造することができる。

 

空気中の炭素固定で燃料を合成

バークレー研究所の研究グループは低電圧で空気中のCO2から低分子量炭素化合物(エチレン、エタノール、プロパノール)を合成する新しい触媒を開発した(Kim et al., PNAS 2017)。これらの炭素分子は工業化学では有用な原料で、例えばエチレンは高分子(PVC)の原料でありエタノールはバイオマスで作られる内燃機関燃料、プロパノールも燃料として価値が高い。

これらの炭素化合物が太陽エネルギーで空気中のCO2から得られるとしたら、既存の車の燃料をガソリンに代えてそのまま利用できるので、新たなインフラ整備も必要なくなり発電所を建設することも必要なくなる。この場合はゼロエミッションではないが排出されるCO2は大気中にあったもので、カーボンサイクルの収支に影響しないためカーボンニュートラル燃料と呼ばれる。

 

coppercataly

Credit: PNAS

新しい触媒のオーバーポテンシャルは従来の触媒では1V以上だったのに対して、(光電流密度でも)300mVであった。研究グループは触媒のナノ構造と反応収率の関係を光電子分光、TEM,SEMで詳しく調べ最適化した。

研究グループが開発した新触媒は直径約7nmのCuナノ粒子が炭素膜上に並べられたナノ構造で、最初の反応でナノ粒子同士は融合して一片が10-40nmの立方体状の構造体をつくる。立方体状のナノ構造が形成されると、CO2から炭素化合物への分解反応が促進される。

 

研究グループによれば電力と太陽エネルギーを使った時の反応のエネルギー変換効率はそれぞれ24.1%と4.3%で、人工光合成の効率が0.1%未満であることからすると大きなステップアップとなる。10cm2の面積の太陽エネルギーで1日当たりエチレン1.3g、エタノール0.8g、プロパノール0.2gが製造できる。

ちなみに1m角の太陽光照射でアルコール燃料が1年で3.6x103kg製造できることになり、カーボンニュートラル燃料車はEVより遥かに実用的と言える時代が来るかもしれない。

 

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