マルチイオンプラズマでプラズマ温度が10倍に〜核融合実用化は2030年代

フランスで建設中のITERはフランスで建設中である。日本を含む参加国は途中で抜けられないため、分担金の確保は優先的に進められる。トカマク方式の核融合のスケール効果について懐疑的な研究結果が世界中の核融合関係者に衝撃を与えた。今度はマルチイオンプラズマで温度が10倍上昇することが示されて話題となっている。

  

ITERはJT60SAと同じくトカマク方式の磁場閉じ込め核融合炉で、ドーナッツ型の容器の中に強力な磁場で高温プラズマを閉じ込める。この世界では「大きいプラズマ閉じ込め容器ほど良い」と言う神話がある。そのため世界最大の容器容積をもつITERが世界で最も実用炉に近いと考えられてきた。ITERは50MW入力で500MWの出力を目指している。

 

マルチイオンプラズマ

MIT研究グループによる最近の論文(Kazakov et al., Nature Physics online June 19, 2017)ではシミュレーションにより複数種(3種)のイオンからなるプラズマのサイクロトロン加速で、ITERのほか既存のJET(注1)、MITのトカマク炉で核融合が可能であることが明らかになった。

(注1)Joint European Torus, Culham, UK

水素と三重水素に3Heを添加したマルチイオンプラズマの最適化は3Heイオンの低速化によってプラズマ温度を上げることが可能になる。3Heの存在で加速モードが短周期イオンサイクロトロンモードに変化することがプラズマ加熱の高効率化と高温をもたらす。また同じメカニズムで3Heを含む太陽フレア中のプラズマの理解も進むとしている。

 

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Credit: MIT

 

この研究はマルチイオンプラズマでサイクロトロン振動共鳴により吸収効率が増大するメカニズムを提案した。上図aはこの研究で提案されたメカニズムで加速された3Heイオンの存在を示唆するJETで計測された3Heと9Beの核反応によるγ線スペクトル。

MITの研究グループによれば1%の3Heの添加で形成されるマルチイオンプラズマを用いることで出力は最大10倍高められる。

マルチイオンプラズマの効果を確かめるためJETの研究チームも追試を行う予定である。プラズマの臨界条件が達成される見通しがついたことで、核融合炉の実用化は2030年代に前倒しされると考えられている。この研究によって核融合の技術課題は一昔前の高温達成から、その持続と容器の耐久性、熱出力の取り出し方法へとなる。2030年代といえば決して遠い将来の話ではない。

また最近の研究ではプラズマ閉じ込めによる核融合による発電システムの実用化にはITERのような巨大なトカマク炉は必ずしも必要でないことが明らかになりつつある。

 

 

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