トリウム溶融塩炉がオランダで実験開始

オランダの原子力研究機構(NRG)はペッテンで45年ぶりとなるトリウム溶融塩炉の実験を開始する。トリウム溶融塩炉は燃料のトリウム232が中性子照射で88%がウラン233に変換される。実質的な燃料はウランであるが、ウラン235ではないのでプルトニウムが発生しないため、核兵器とは無縁の原子炉として注目された時期があった。

 

しかし溶融塩炉の一般的な配管腐食問題を抱えており、構造が複雑で大型化が困難なことから、安全面と採算性の両面で次世代炉として不適とする意見もあった。トリウム溶融塩炉財団は8月10日にオランダ、ペッテンにある高中性子束アイソトープ原子炉にフッ化リチウムとフッ化トリウム混合物が入った容器の中性子照射のために挿入した。

上記の課題があるものの核兵器と無縁なトリウム溶融塩炉は非核拡散の立場から次世代炉の一角とみなす推進論者も多い。特に核兵器用プルトニウム生産に向かないとされてきた軽水炉でも大型炉では無視できないプルトニウムができてしまう。また溶融塩炉の自己制御性により暴走事故が起きないとされることからトリウム原子炉への期待は大きく膨らんだ。トリウム溶融塩炉はこれまで2004年にインドが小型炉を建設して以来、45年間建設例がなかった。

 

トリウム溶融塩炉の燃料はトリウム232とウラン233でトリウムはウラン233に変換されるため、トリウムへの中性子照射で起こす核反応がトリウムをウラン233に変換する。今回の実験では中性子照射でトリウムの変換核反応を起こす条件を探ることが第一の目的である。その後、容器の金属材料が中性子照射に耐えられるかを確認し、最終的にはトリウム溶融塩炉の核廃棄物処理対策が課題となる。

研究開発チームは溶融塩にフッ化リチウムとフッ化トリウム混合物を選んだ理由として最終的な設計の溶融塩材料として採用されているためだとしている。溶融塩炉の最大の特徴は溶融塩自身が燃料のため、緊急停止は溶融塩を経路から抜き取ることで核反応を止められることである。(下図参照)

 

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Credit: emaze

 

インドがトリウム溶融塩炉を建設した理由はトリウムが豊富なためである。現実的には急増する電力需要に答えるべく大型軽水炉の建設計画も進めている。一方、米国では1960年代にオークリッジ国立研究所で溶融塩炉が稼働しており溶融塩炉を次世代炉として位置付ける技術者も多い。中止に追い込まれた新規原子炉(軽水炉)に代わり実用炉として登場する日が来るのかもしれない。今回の実験ではトリウム溶融塩炉実用化に向けた重要なステップとなる。

このことはまた50年以上欠けて相当な予算を注ぎ込みながら実用化の目処が立っていない高速増殖炉によるプルトニウム処理戦略にも影響を与えかねない。

 

 

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