エネルギー科学最前線2017〜CO2還元と光触媒の新展開

化石燃料からの脱却宣言が欧州で相次いでいる。英国、フランス、ドイツの動きは2040年を界に内燃機関の車は姿を消エルとしても過言ではない。またこのような政策と並行して(国内ではまだまだの感が強いが、欧州、米国、中国のEV化の動きはもはや無視できなくなってきた。EVだけがが走り回る日が仮に来るとしたら、EVの消費電力は増大し電力不足になる。不足分は英国だけでも30GW〜原発約10基分とされる。

 

EV普及で電力不足に

原発推進派にとっては新規原発建設や再稼働にとって好機に見えるかもしれない。しかし建設に現状でさえ20年以上かかる原発を10基も建設することは財政的にも、タイミング的にも厳しいばかりでなく、電力料金の上乗せになるのでユーザー負担が大きい。そもそもEV普及で電力不足になっても住民の反対運動は消え去ることはないので建設は(少なくとも先進国では)順調に進むとは思えない。最新型の欧州型原子炉(EPR)が中国では稼働しているのみでフランス、イギリスの建設は遅れに遅れて完成の目処が立たない。米国の建設中の原子炉も東芝問題で中止になった。

 

ではどうするかといえば、再生可能エネルギー枠を増やすのが現実的である。しかしドイツやスペインの例を見ても明らかなように、設備投資の財源確保とそれを返済するユーザー負担の増大という課題は残る。再生可能エネルギーの安定電源としての資質も問われるが、これは蓄電技術と抱き合わせで解決できない問題ではない。様々なアプローチが検討されているが、中でも太陽光のエネルギーや触媒を利用して、光合成反応で貯蔵可能な水素やCO2を還元によりカーボンニュートラル燃料(注1)を合成することは持続性の高い再生可能エネルギーとなる潜在能力がある。

(注1)カーボンニュートラルと言っても燃焼すればCO2を発生するが、そのカーボンはもともと大気中にCO2として存在していたので、カーボンを出さないという意味ではなく、カーボンサイクルに影響を与えない、という意味である。

 

CO2からカーボンニュートラル燃料を製造

大気中のCO2からカーボンニュートラル燃料を製造できれば、既存の内燃機関の車と給油インフラがそのまま使えるのでEV化を急ぐ必要がなくなる。また枯渇する化石燃料に頼らずに済むのでエネルギー危機対策にも、そして環境保護にも三拍子揃った未来技術である。

カルテックの研究グループはCO2還元反応の選択制、すなわち燃料となる最終生成物、の選択性を高める添加剤を見出した。これまでCO2還元反応では副次生成物が多く、目的とする燃料の収率が低いことが問題であった。

 

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Credit: Caltech

 

研究グループが開発した添加剤により燃料となるエチレン、エタノール、プロパノールの選択性は80%で、残りは水素とメタンであった。炭素を多く含む生成物が望ましい理由はそれらが液体であることである。太陽エネルギーの代わりに研究グループは触媒を用いた。CO2は液体に溶かし界面活性剤として知られるアリルピリジニウムを電極に薄く塗布した。この薄膜により(メカニズムは未解明であるが)選択性は著しく向上した。

 

CNナノエアロゲルで光触媒効率が向上

中国の福州大学の研究グループは窒化炭素ナノエアロゲルが太陽光照射下での水分解触媒として優れた性能を有することを見出した(Ou et al., Angewandte Chemie on line Aug. 3, 2017)。

メラミンはフォルムアルデヒドによって高分子樹脂化されるが、窒化炭素(CN)のナノ構造体(エアロゲル)を形成することもできる。グラフェンのような2DネットワークをつくるCNナノ構造体は人工光合成の高性能触媒となる。エアロゲルは水便氏を含まないゲルで99%が空間の多孔質材料である。

 

CNエアロゲルはグラフェン状の2Dネットワークをつくるが特徴は窒素原子の機能性を有することである。エアロゲルの作成にはCNナノ粒子のコロイドを水和ゲル(通常のゲル)としてから凍結乾燥する。

CNエアロゲル触媒を光触媒とすることで、白金触媒が不要となり低コストで太陽エネルギーを利用した水分解(人工葉)が製造できる。太陽エネルギーで水素を製造することは燃料電池の本格普及に欠かせない。同時に貯蔵できる水素エネルギーは人工増加と化石燃料の枯渇によるエネルギー危機にとって救世主となる。

カーボンニュートラル燃料合成と光触媒による水素エネルギー貯蔵はエネルギー問題と大気汚染を解決する未来技術である。最近、研究展開のピッチが早まっているので、遠い未来のことではなく現実性が高い先端科学技術である。

 

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Credit: Angewandte Chemie

 

 

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