トカマクEASTが高温プラズマの持続で世界記録達成

中国のトカマクEAST(Experimental Advance Superconducting Tokamak)は世界で初めて超伝導磁石を用いてプラズマの磁場閉じ込めを行うユニークなものだが、知名度は今ひとつであった。しかしドイツ(マックスプランク研究所)が建設した世界最大のステラレータ型核融合炉W7-Xも超伝導磁石を用いる。また最近注目されている民間主導の球形トカマクでも超伝導磁石が用いられることで、急速に超伝導磁石を用いた核融合炉に関心が集まっている。

 

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Credit: Nature Phys. 9, 817 (2013)

 

EASTは2017年7月3日に長パルスHモードで世界最長となる高温プラズマ閉じ込め時間101.2秒を達成した。EASTのプラズマ加熱はRFによるもので熱負荷が集中するタングステンのダイバータ(注1)はITER方式で冷却される。高温プラズマの目安となるグリーンワルド電子密度を50%超えた高温プラズマを自己の電流で長時間安定に閉じ込めることに成功した。

(注1)下図(左)の断面図で磁力線が交差する部分の下の部分がダイバータ領域でこの部分に熱負荷が集中する。タングステンを材質とするダイバータのためにプラズマ容器壁が削られないですむ。

 

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Credit: EAST

 

EASTの運転開始は2006年であったが、それ以降様々な課題に直面しては解決策を見出してようやく11年後に、プラズマ閉じ込め時間の世界記録を打ち立てた。ここ結果はITERにもフイードバックされるとともに次世機のCFETR(China Fusion Engineering Test Reactor)にも反映される。

 

EASTはBASIC(Beijing Advanced Sciences and Innovation Center of CAS)の予算で研究開発が行われている。CASは中国科学アカデミー(Chinese Academy of Science)。BASICは2014年に創設された北京に本部を置く大型科学技術予算の統括とイノベーションセンターの役割を持つ組織で、管轄する分野は放射光(加速器)、中国版地球シミュレーター(スパコン)、宇宙環境、極限環境など4部門である。BASICの特徴は大型施設を効率的に建設・運用するだけではなく青少年に科学技術教育を行い次世代を担う若い研究者層を拡充する教育的な側面も持つことである。

 

筆者の滞在する大学もEASTのあるプラズマ物理研究所(ASIPP)に近い。この街の青少年の科学教育が徹底しているな、と感じる。風薫る新緑の季節のある週末、オフイスの外が子供達の嬌声で騒がしいので外に出てみると、フロアに群がる子供達と保護者を前に見学説明会が行われていた。「科学離れ、理科離れ」とはかけ離れた世界である。

子供達の輝いている目と、休日出勤でも楽しそうに施設の説明をしている若い職員たちを見ていると、懐かしくなった。かつて日本もこういう時があったはずだ。子供達が科学に興味を持たなくなって久しいが、それは彼らの責任ではないように思えてきた。科学技術に冷めた態度の教育現場や事務量を増やして、研究者を忙殺する研究所に責任があるのではないだろうか。

 

 

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