高性能触媒で実用化に近づくメタノール燃料電池

EVとFCVのどちらが将来有力かという議論は難しい。将来のエネルギー源として随時発電して電力として使うか、水素としてエネルギーを貯蔵して燃料電池で必要な量を発電するのか、どちらの方が環境負荷が少ないのかといった、国のエネルギー政策に直結する大問題だからだ。

 

エネルギー源(水素・電力)まで含めなければEVとFCVの優劣は決まらない

EVを主張する人たちは電気エネルギーのクリーンさを強調するが、現実には(燃料製造を含めた)発電による排出ガスを含めると「綺麗事」にすぎない。排出ガスが少ないとされる原子力は核燃料の製造と廃棄を含めたらクリーンなイメージは一転する。一方、EV同様に運転時に排出ガスがない水素エネルギーの場合でも、水素製造(水分解)に大量の電力と化石燃料を使ってしまえば、「同じ穴の狢」である。

燃料電池に水素を使わなければ後者は解決できるが、効率と輸送・貯蔵のしやすさから選択肢は少なくなる。エネファーム(注1)のように天然ガスを燃料とする場合でも結局は改質器で水素を取り出すので、燃料は水素である。一方、メタノール燃料電池では空気中のCO2を固定(還元)して作られた合成燃料で発電する。将来的には水分解(水素)と空気中のCO2(合成燃料)の競合となり、変換効率(採算性)の競争で最終的な燃料種別が決まると考えられる。しかしどちらも地球上に有り余るエネルギー資源であり、両方ともクリーンな発電ができるのだから共存しても良いと筆者は考えている。

(注1)厳密には排熱を再利用する点で小規模のコジエネレーション発電システムなので、熱効率が高い。

 

高濃度メタノール燃料電池

中国の科学アカデミー(プロセス工学研究所)の研究グループは高性能のメタノール燃料電池の開発に成功した(Science Advances 3 e1700580 (2017))。メタノール燃料電池のボトルネックはメタノールが負極から正極にプロトン交換電解質膜を通って移動することで、劣化で燃料電池効率が低下する問題であった。

研究グループは15Mまでの高濃度メタノールで運転できる新しい電気化学触媒を開発した(下図)。これまでの触媒は正負電極ともプラチナを使用していたが負極のメタノール酸化と正極の酸化反応に選択性がなかった。研究グループは下図に示すようにコア・シェル・シェル構造のAu-Ag2S-Pt3元ナノ複合体を用いるとAu-Pd接合が正極反応に高い選択性を持つことを見出した。

 

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Credit: Science Advances

 

この研究で15Mまでの高濃度メタノールを燃料とする非水素系燃料電池の実用化の目処がたった。メタノールを燃料とすることが可能になればFCVは高圧水素タンクの代わりに従来の内燃機関の車同様の燃料タンクで済む。(水素充填インフラ整備に比べれば)メタノール燃料電池のメリットは圧倒的にコストが低くなる。

燃料充填インフラは従来のガソリンスタンドとさほど変わらない。すでに米国ではガソリンにバイオエタノールを混合して販売することを義務付けている州もあるが、燃料を高濃度メタノールに変更することは容易で設備も変更点はほとんどない。

 

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Credit: Science Advances

水素を燃料とした燃料電池は大型水素ステーションの支援が不可欠なので、工場や大型エネルギー貯蔵・発電施設に限定されるのかもしれない。しかしエネルギー危機と環境保全の両側面で、貯蔵できるクリーンエネルギーとして水素もメタノールも期待度が高い。

何れにしても地球上に有り余る原材料から「クリーンに」製造し貯蔵して、発電できればEVに乗るか、FCVに乗るかはユーザーが自由に選ぶことができるので、今どちらかを決める必要はなさそうだ。

 

 

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